Daylight


□【121】〜
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櫻葉【121】◆Daylight◆





病院への面会ということもあって、平日の旅行を計画したけど。
仕事の休みの調整ができたのは、さらに1ヶ月ほど経った頃だった。


その間にも、雅紀が目を覚ますんじゃないかと、ハラハラドキドキの毎日だった。

目を覚ましてほしいのに、それは今じゃないなんて、ずいぶんと我儘だけど。



「翔くん、早退?
明日から休みなんでしょ?」



「あぁ、潤、お疲れ…
ちょっと、な。」



「そっか…
昼飯の誘いに来たんだけど…
またに、しますか?」



時間を確認するまでもない。

半休を取ったのは夕方までに猫を預けに行くためで、まだ時間はある。



「いや、飯、行こう。
俺はそのまま帰るけど…」



「おっ!付き合いいいじゃない?」



ニヤっと笑う潤のことは、昔から憎めない。
一時は、運命が差し替えられる相手だと不安にもなったが、未来に向かって進んでいる手応えがある今では、気の置けない相手だ。


いつもは潤が店を選ぶことが多い。
今日は俺が近くの定食屋へ連れて行った。
多少、古びた店だけど、串カツが絶品なんだ。

この店は昼間は暖簾を出さない。
もっぱら夜のみの営業で、常連客だけが、定食を求めて昼にもやってくることがある。



「へぇ、近くなのに知らなかったな…」



俺はテーブルに少し乗り出すと、小声で潤に言う。



「おやっさんが偏屈なんだ。
だからさ?口コミとか嫌いなわけ…
美味いと思っても他言するな!ってのが、
この店の暗黙のルールなんだ。」



小声で話したはずなのに、カウンターの向こう側から罵声と、バカでかい笑い声がふってくる。



「誰が偏屈だって?
ひとりで来ないなら出入り禁止にするぞ!
ガハハハハハハ…」



「ちょ、おやっさん…
彼はね、彼は特別だから。
な?潤も他言はしないだろ?」



結局、テーブルからカウンターへ席を移し、潤はというと おやっさんと意気投合していた。

近いうち、夜の常連客になりそうな勢いだ。

美味い串カツの定食を食べ、駅までの道のりで、雅紀と旅行することを少し話した。



「相葉くんに会えるんだ?」



「まぁ、目を覚ましたわけじゃないけどな。
全く、素性を教えて貰えないからさ。
少しは手掛かりになるかと思ってる。」



「そっか…
じゃ、お土産と、土産話、待ってるわ。
翔くんと相葉くんが楽しく旅行中に、
俺は、翔くんの仕事の尻拭いか〜」



「お前っ!尻拭いって、、
そもそも部署から違うだろっ!」



口角を少し上げ、サっと右手を出してくる。



「翔くん、検討を祈ってるから…」



「あぁ、ありがとな。」



しっかり手を握り、潤の気持ちを受け取ってから、その背中を途中まで見送って、
俺は地下から吹き上げる風の中、階段を降りていった。








…つづく…
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