CuteなSugar

□大宮出逢い編(にのちゃん誕生日記念)
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大宮【出逢い編☆1】CuteなSugar/誕生日記念



美術室に迎う途中の音楽室から、ピアノの音が聴こえてくる。
近づくにつれ、その悲しくも美しい旋律に足が止まる。
中を覗き見れば、眼鏡をかけた小柄な男の子が、静かに俯いて鍵盤に触れていた。

新入生か?


ふ、と、手が止まり、こちらに向けられた顔に息を飲んだ。

真っ白い肌と、吸い込まれるような澄んだ瞳。
開襟襟から覗く胸元のラインは完璧な仕上がりだ。


「あっ、、ピアノ使われるんですよね?
勝手に弾いてすみません。」


急いで立ち去ろうとするから手で制止して、自分は美術室に行く途中だったと説明した。



「で、それ、なんて曲?」



「あぁ、、あの……
即興なんで、曲名はありません。」



「即興?すげぇな……」




そんな始まりだったんだ。


幾日かして、今度は、彼が美術室にやってきた。

背中に気配を感じて振り返ると、黙ったまま入り口に立ってるから。



「入れ、、ば?」



「邪魔になりませんか?」



「ん、別に……」



そのまま、無言で時間だけが過ぎていく。

でも、苦じゃなかった。
無言でも、少し会話をしても、その会話が続かなくても、彼と過ごす空間は何故か窮屈ではなくて。

毎日やってくるわけではないのが良かったのだろうけど、他の日は、何をしているのか気になった。



「ここに来ない日は、何やってるの?
部活、、?」


「いえ、図書室にいます。
あとは、化学準備室とか……」



それをキッカケに、名前を聞いたり、自分のことを話すようになった。

俺が好きだったのは、部活もやってないカズが真っ直ぐに帰宅せずに「図書室や音楽室」に寄る理由、だ。



「あれ、また聞かせてよ?
真っ直ぐ帰らない話。」



美術室で、粘土を捏ねながら言うと、カズは、本から顔を上げて『またでしか?』と怪訝な顔をする。



「だって、あんな理由だと思わないだろ?」



「だったら、どんな理由だと思ってたんですか?」



「家に帰りたくねぇ、ただならぬ理由があるのか?とか。
図書室で勉強しまくってるとか?」



あんな悲しくも美しい旋律を聴かされていたこともあるし、カズは自分をさらけ出さないタイプだから、なおさらだ。



「だから、何度も言ってますけど。
バス通学なんで。
高台を通る路線バスを使ってるんです。
日が暮れたら、夜景が綺麗なんですよ。」



「んふふ、、、で?」



「だからぁ、、、はぁ。
同じ運賃払ってるんだから、夜景が見れたほうが得でしょ?」



これこれ。
カズのへんなとこ。
俺なら、さっさと帰るけどね。



「でも、夜景を見たいわけじゃないんでしょ?」



「まぁ、別に……
夜景なんて見ても、ねぇ?
でも、見るか見ないかなら、見るほうが得かな?って。」



「んふふふふ、、、
カズ、おもしれぇな。」



何を考えてるのか、わからないところが好きだった。
そして、その想いが歪んだものになるのに時間はかからなかった。

カズを、自分だけのものにしたい、そう強く思えば思うほど、彼の心も身体もすべてを暴きたくて堪らなくなった。


だから、コンクールを理由にしてモデルを頼んだんだ。


いつも開襟襟から少しだけ見える胸元。
いつも見える場所より少し進んだその先を目に焼き付けておきたい、そんな気持ちからだった。

椅子に座るカズに歩み寄り、シャツのボタンに手をかける。



「ひとつ、、外してもいいか?」



「どうぞ…」



ひとつ外せば、艶っぽい肌が見え、鼓動が早まった。

すげぇ、、見たこともないぐらい綺麗だ。



「も、、ひとつ、、いい?」



「構いませんよ?」



そうやって、ひとつ、またひとつとボタンを外して、最後、カズに確認しないまま、肩からシャツを落とした。

部屋の空気まで変えてしまうほど、真っ白く透き通る肌と、包み込みたくなるような華奢な体つき。

美しさに魅せられて、言葉より手が先に出ていた。



…つづく…




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