CuteなSugar
□ミサンガ
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櫻葉【ミサンガ☆1】CuteなSugar
「明日からだね…グスッ」
「雅紀、もう泣いてんの?
それに5日間だよ?
延長もないし、必ず帰ってくるから、、な?」
もう、それは20回は聞いてる。
わかってるよ、わかってる。
だけど寂しいんだもん…。
しょーちゃんは、明日から出張に行く。
海外事業部だから仕方ないンだけど、年に2回ぐらい出張がある。
だって生まれてから、ずっとずっと一緒だったじゃん。
「雅紀、、あの時と違うんだから。
もう離れ離れになったりしないって約束しただろ?」
あの時と違ったって、しょーちゃんと少しでも離れるのは寂しかった。
すぐに帰ってくるってわかってたって…。
帰ってくるまでは、朝もひとり、お昼だってひとり、夜だって、お風呂だって、ベッドだって…。
「だって、しょーちゃん居なかったら、ご飯だってお風呂だってベッドだって、、全部独り占めなんだよ?グスッ…」
「いや、えっ?
それ、なんか日本語の使い方、間違えてない?」
「しょーちゃんのバカ!バカバカバカ!」
「バカって、、仕事だろ?」
「いいもん、、今日からベッド独り占めで大の字で寝るもん!」
「あの、、俺、明日からだから…ベッド、、あの、、、今夜はその・・・
雅紀ぃ、、そんないじけるなよぉぉ。」
しょーちゃんは、いつもオレがグズグズ言うのに付き合ってくれる。
それから、ギュって抱き締めてくれて、出張に行く前日は必ずオレが寝るまで頭を撫でてくれるんだ。
*あれは高校2年の9月だった*
まだまだ残暑が厳しくて…。
夏休みに骨折したところのギブスが取れた頃だった。
(オレ、骨折してた設定だよね?)
学校が終わって、一度は自分の家へと帰るんだけど、夜になると しょーちゃんは必ずうちにやってくる。
これは骨折した時からずっと。
何故なら、オレの頭を洗ってくれているから。
頭を洗うだけじゃなくって、たまにキスや他の恥ずかしいこともしてたけど。
あの日は、家に帰ると、しょーちゃんのパパが来てて、うちのじーちゃんと話をしていたんだ。
「海外ですか・・・いやぁ、出世されましたなぁ。」
「で、家をどうするか考えたんですが・・・
荷物もあるんで、お願い出来たらと…」
「えぇ、えぇ、ばあさんに言っときますよ。
昼間は畑に行くだけだ。
天気のいい日は、風を入れておきますよ。」
最初はなんの話かわからなかったけど、開け放たれたリビングのドアの前で盗み聞きをしていて、しょーちゃんパパが仕事で海外へ行くことがわかった。
「期間がハッキリしないんで・・・
大学入試までは子供たちも一緒に…」
子供たちも一緒に?
うそっ、、、
しょーちゃんも?いっちゃう・・・
生まれてから ずぅっと一緒だった しょーちゃんが、いなくなっちゃう・・・・。
オレは階段の下に鞄を放り投げて、急いで しょーちゃんちに向かったら、しょーちゃんも家から出てきたところだった。
薄暗い中、オレはしょーちゃんに抱き着いた。
「しょーちゃんっ!
いまっ、、じーちゃん・・・ぅぅっ・・
しょ、、、パパ、、グスッ・・・ふぇっ…」
いやだ、いやだ、いやだいやだいやだ!
しょーちゃんがいっちゃうなんて、いやだっ!
「雅紀、、俺も今、ママから聞いたばかりで・・・
ちょ、そんなに泣くなよ?
死ぬわけじゃないんだから。」
「だっ、、だっ、、、ふぇっ…
会えな、、くっ・・・・」
でも、まだまだ子供のオレたちが、行きたくないとか、離れたくないなんて言えるはずもなくて。
ううん、、半分、大人になりかけていたから、言えなかったんだ。
離れたくない、なんて子供染みたことをさ。
でも、しょーちゃんとオレは、ただの幼馴染みじゃない。
やっとお互いの気持ちを確認して、幼馴染みとは また別の二人の絆を育み出したばかりだった。
そこへきて、突然の別れ・・・。
気持ちがついていかないのも当然だった。
…つづく…