CuteなSugar
□恋をした
3ページ/3ページ
櫻葉【恋をした☆3】CuteなSugar
家に帰るまでの道中、目を合わせることが出来ずにいたのに、雅紀はあっけらかんと部活のことを話している。
雅紀の所属するバスケ部は、部員数4人で活動していて、大会や試合ともなれば、他の部活のやつが応援で参戦するような状態だった。
そのせいで、普段から他の部活のやつがバスケ部に混ざって一緒にやることが珍しくない。
電車に乗ってからも、今日のことを楽しそうに伝えてくる。
「それから今日ね、松岡先輩が来てくれたんだ♪」
「松岡、、どっちの?」
「最初、軽音部の松岡先輩がきてくれて…」
軽音部の松岡…。
こいつは、やたらと雅紀に絡むから好きになれなかった。
先輩面してさ?
雅紀を私物のように可愛がる。
雅紀は俺の気持ちなんて無視して仔犬みたいに懐いてるし…。
お前は、雅紀に構う暇があったら、太鼓だけ叩いとけってーの!
・・・・。
俺、、、、嫉妬してんのか?
「それからねっ♪
テニス部の松岡先輩も来てくれたんだよ♪
だから、やたらと暑かった!」
テニス部の松岡…。
こいつは、嵐高の中でも、一番熱血と言われてる男で、こいつがいれば、真冬でも陽炎が出来ると言われてる。
テニス部のくせに、偉そうに雅紀に“そこだ!シュートだ!パスだ!”と、やたらと手取り足取り教えたがりーので、ボディタッチが多いんだよっ!
・・・・・。
俺の雅紀に触るなよ、、、(泣)
「しょーちゃん?大丈夫?」
「え?あ、あぁ、うん…」
「日向にいたから、熱中症かな?
大丈夫?具合悪い?オレので良かったら…?」
心配そうな顔で覗き込んできて、自分の水筒を渡してきてくれたんだけど、受け取ろうとしたら、突然、笑い出した。
「ふふふ〜、ごめん、空だったんだ!オレの!
松岡先輩のせいで暑かったから。
駅ついたら、なんか買おう?」
「・・・・・・・・。
アハハハハ、雅紀らしいな。。。」
駅について、真っ先にホームにある自販機に向かうと、スポーツドリンクを買って渡してくれた。
「俺も買うから、いいよ。」
「全部飲めないから、半分こしよ?」
半分こ・・・。
その言葉の響きは、すごく好きだけど、雅紀は誰とでも“半分こ”したりするんだろうか?
ずっと近くにいて、ずっと自分が一番だと思って、それを当たり前に過ごしてきたけど。
だから、嫉妬することがなかったというか、深く考えて来なかったのに。
俺は雅紀からボトルを受け取って少し喉を潤した。
「サンキュー…」
その後、雅紀も飲んだけど直視出来なくて、そっぽを向いた。
それから、カネナシスーパーで弁当を買って、俺の部屋。
これはいつものことで、だいたい午後は俺の部屋で宿題やったり、遊んだりするのが日課だった。
つい先日までは、サッカー部の連中と雅紀が喋ってる姿を見て、“良かった”なんて思えていたのに。
今は、雅紀を取り巻く環境を素直に喜ぶよりも不安ばかりが沸き上がる。
「しょーちゃん?なんかあったでしょ?
さっきから全然進んでないし…」
「あ、うん、なんでもないよ。」
「それにさ?」
「なんだよ?」
「あの日と同じ顔してる。
しょーちゃんの妹が入院したあの日と同じ…」
まだ小学生だった。
妹が入院することになって、俺は雅紀の家に預けられたことがある。
「懐かしいな…」
「しょーちゃん、あの日も痩せ我慢してたじゃん…
サッカー部で何かあったの?」
「ち、ちがうよっ…」
悟られたくなくて顔を逸らしたのに、雅紀がふんわりと抱き着いてきたんだ。
「しょーちゃん、オレはどこにもいかないよ。
ずっとずっと、一緒にいるから寂しくないよ?」
あの日と同じ。
妹が入院した日の夜も、同じことを言ってくれた。
鈍感なのか初なのか、、、。
雅紀より、一歩だけ大人になってしまった自分を疎ましく思っていた。
***
家に帰ると、雅紀もどこかへ出掛けていた雰囲気だった。
「ただいま…雅紀もどこか行ってきたの?」
「うん♪松岡先輩にカラオケに誘われて…♪」
また松岡かよ!
お前も早く結婚しろ!
いや、結婚したからと言って、雅紀を狙ってないとは言い切れないよな。
げんに、今日だって大空先輩からチョコを貰ってきてるし。
「これ、雅紀にって…」
雅紀は袋の中を見て『懐かしいー♪』と声を張り上げる。
「しょーちゃん?あれやってよ♪」
「えー、やだよ。。。」
「やって、やって!ハムスターみたいでかわいかったんだもん♪」
俺の気持ちも知らずに、サッカーボールの包みを開くと、まぁるいチョコレートを二つ、口の中に押し込んできた。
「しょーちゃん、ちゃんと、ほっぺにいれて!
1枚撮るからそのままね♪」
あの日、自分が一歩大人になったと思っていたけど、それは大きな間違いだった。
雅紀は、、、鈍感なんだ。
…おしまい…