CuteなSugar

□恋をした
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櫻葉【恋をした☆1】CuteなSugar




サッカー部の大空先輩が結婚することになって、式に呼ばれた。

二次会は、雅紀も一緒にと言われたんだけど、雅紀はバスケ部だったことと、あいつの人見知りが発動して、留守番するって言うから俺だけ出席。


二次会が終わり三次会も誘われたけど、さすがに そこは断って帰ろうとした時、大空先輩に引き留められたんだ。



「櫻井っ!今日はありがとな。
まだ相葉くんと一緒だったんだね。」



「えぇ、、だから僕は結婚はないかな?
でも、自分で決めたことだし、毎日が楽しいから。」



「お前、相葉くんの話する時、あの頃と同じ顔してるな。
これ、相葉くんに渡しておいてよ。
で、今度は新居には二人で遊びにきてくれよ?」



『お幸せに』と手を上げて駅まで歩き出す。
大空先輩から渡された紙袋を覗くと、透明のケースの中に、サッカーボールの柄で包まれた、まぁるいチョコが入っていた。


大空先輩のように、普通の道ではないかもしれないけど、これは俺と雅紀が決めた道で、そこに後悔はない。

雅紀を意識した日から、ずっと、ずぅっと大切にしたいと思ってきていたけど、それが子供の気持ちから大人への道へと変わった日のことは、今でも鮮明に覚えている。





*あれは高校2年の夏休みに入ってすぐだった*



夏休みに部活があると言っても、趣味的な活動のために、どの部活もだいたい午前中で終わる。

大会がある部活でも、早くも予選落ちしてるから、みんな気楽に身体を動かしに来てるだけ。
というより、友達に会いに来てるという感じ。


女子の部室や更衣室は校舎の中にあるのに、男子が使う部室といえば体育館の脇に建てられていて、真夏となれば、その中は灼熱で最悪の環境だった。
とても中で過ごすことなんて出来ない。

この日は、サッカー部の滝沢と話をしながら、雅紀のバスケ部が終わるのを待っていた。

滝沢は、部室の壁に寄りかかって座り、俺は滝沢と向かい合うように体育館を背にして立っていたんだ。



「しょーちゃんっ♪」



「うわぁっ!」



突如、背中に勢いのついた重さを感じて、重力がかかる感覚と、背中に熱が篭る。

雅紀が俺におぶさるように飛び乗ってきたんだ。

向かいの滝沢は、ニヤニヤと笑いながらそれを見ていた。



「見せるねぇ…
今、相葉くんがシーってやってたとこから、笑いそうだったよ。」



滝沢は、口の前に人差し指を立てると、雅紀が俺をビックリさせようとしていたことを、楽しそうに報告してきた。

体育館隣の校舎からは、キャーキャーと黄色い声が響いてくる。
きっと、、櫻葉会とかいう連中だろう。

雅紀はとにかくモテた。
俺もそれなりに、、だったけど、雅紀のモテ方は地味に凄かったんだ。

俺との噂が出て『あの二人はガチだ!』となってから、何故かその人気は加速して、今では“二人を応援する会”として、櫻葉会というものがあるらしい。

まぁ、どうでもいいんだけど、このことが俺たちのその後の人生において、“隠す”という選択肢を無くした要素ではあった。



雅紀が俺からスルリと落ちると同時に振り返る。



「お前っっ、、、」



『暑いんだよ!』と言うはずだったんだけど。


雅紀を見て、言葉を失ってしまう。


ユニホームのタンクトップから見える鎖骨や、細くしなやかで長い腕。
その見えた肌に光る汗と、眩しいぐらいの笑顔。


こんなに、、、かわいかったっけ?


雅紀のことは小さな時から知っていたし、細身だということも、もちろん把握していた。

ただ、抱き締めた時に、それは目で見るものより遥かに儚げで、腕を回すと同じ男とは思えないような“物足りなさ”があった。


そして、その“物足りなさ”が、俺の心を動かしつつあった時だったんだ。


そういえば、雅紀のユニホーム姿、、あまり見たことがなかったけど。
だいたい、雅紀が先に終わって待ってることがほとんどだったし…。

それに、、、それ、少し大きくないか?

ゆったりとしたユニホームのせいで、それに包まれた雅紀は、さらに細く儚げで、でも、そこから伸びる肢体がドキっとするほど誘惑的で目が離せない。


なのに、こともあろうか、雅紀は『暑い!着替えてくるね♪』と言って、その場で、パッとユニホームを脱いだんだ。


俺は咄嗟に“誰にも見せたくない”と身体が反応して、雅紀のことを自分の身体で隠していた。


そう、思い切り抱き締める形で…。





…つづく…
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