CuteなSugar

□ヒーロー
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櫻葉【ヒーロー☆5】CuteなSugar





だけど、オレたちは、まだまだ子供で事態をきちんと飲み込めて居なかった。

しょーちゃんは、うちに泊まって、翌日にはオレのじーちゃんが病院に連れて行ったんだけど。

しょーちゃんとオレが病院の待合室で隣合ってひとつの少年雑誌を仲良く読んでる頃、しょーちゃんの両親と、オレの両親は、警察に行ったり、学校の先生と話し合いをしてたんだ。


夜になって、じーちゃんから呼ばれて二人で下に行くと、普段は使わない仏壇が置いてある部屋に連れて行かれた。

部屋に入ると、親と校長先生と担任の先生とサッカー部の顧問の先生が揃って怖い顔をして座ってる。


しょーちゃんを見たら、指先で頬っぺたをポリポリしながら、“こりゃ、マズいな…”って顔をしてた。


そこで初めて知ったことだった。
しょーちゃんは、オレが襲われた翌日、部活に行くと言っていたけど、部活を辞めてきてたんだ。
部員に迷惑をかけないために、そこから計画してたんだ。

その計画してたとこや、部活を辞める理由をでっち上げてたことを、こっぴどく叱られてる間、しょーちゃんは黙って聞いていて、すげー、カッコいいって。。。

オレのせいなんだけど、なんか、ここまで解っててやったって感じがして、覚悟というか、そういうのがカッコいいなって。


最後に、しょーちゃんのパパが、今後のことを教えてくれた。



「今回、学校の計らいもあって処分は訓戒だ。
そんな顔で学校に行けば騒ぎにもなるし、雅紀くんのこともあるからな。
その代わり…1週間、学校に行かない変わりに雅紀くんの家の畑を手伝え。
罰はそれだけだ。
それから、部活は夏休みから復帰しろ。翔、お前もだぞ。
それまでは二人とも部活をしないで早めに帰宅すること。いいな?」



「はい…」



「はい、、あっ、あの…
しょーちゃんのパ、、、
じゃなくて、翔くんのお父さん…
くんかい?って、それ、しょーちゃん、どうなっちゃうんですか?
あの、、牢屋とか行かないですよね?」



何故か、みんな笑い出して、隣のしょーちゃんを見たら、下を向いたまま肩を震わせてる。

なんで?
なんで、笑うの?


オレの疑問に、担任の先生が教えてくれた。



「相葉くん、訓戒というのは、処分としては一番軽いんだ。
今回は、君のことがあった上での行動だし、櫻井くんが捕まえた犯人も…
他にも被害届が多数出ていたらしいから。
だから、学校側としては、処分無しでもいいんだけど、櫻井くんのお父さんがそれじゃ教育上良くないからと仰ったんで。
まぁ、簡単に言えば、怪我で欠席と変わらないってことかな?」



「そういうことだ。
翔、後で、母さんが荷物を届けるから。」



「荷物?」



「1週間、雅紀くんのおじいさんの元で叩き直されてから帰ってこい!」



『もう部屋に戻っていい』と言われ、しょーちゃんを見たら、座布団から降りて頭を下げたから、オレも真似をした。


部屋に戻る廊下で、しょーちゃんの足取りがどんどん早くなって、階段まで来たら勢いよく駆け上がるから、オレも走ってついていく。


部屋に入ると、しょーちゃんに腰から抱き上げられて、しょーちゃんがクルクルと回り出した!



「雅紀!やったー!
1週間も休めて、ずっと雅紀と一緒じゃん♪」



「ちょっ、、しょーちゃん!?
え?しょーちゃん、反省してないの?」



しょーちゃんは、ピタッと止まると、オレを見てニヤニヤと笑う。



「反省なんかするかよ!
雅紀も聞いただろ?
俺は警察が捕まえられなかった犯人を捕まえたんだぞ?」



しょーちゃんパパにも先生にも怒られて、グっと黙ってたから、しょーちゃんが落ち込んでると思ったのに。。。
しょーちゃんは、『休みだー休みだー』ってニコニコしてる。



「しょーちゃん、ヒーローみたいだね!
ヒーローインタビューです♪」



オレがマイクのつもりで出したグーに、何故かしょーちゃんはかぶりついてきた。




***



いつまでも難しい顔をしている しょーちゃんを和ませたくて聞いてみる。



「じーちゃんの1週間のシゴキ、覚えてる?」



「忘れるかよ…
1週間、雅紀と仲良く遊べると思ってたのに、まさか5時起きとはな。。。」



1週間、あの仏壇がある部屋に二人で寝かされて、毎朝5時に叩き起こされた。

朝御飯の前に畑に行って、朝御飯のあとは、リヤカーを引いて近所から生ゴミを集めて回った。
じーちゃんは、畑は土が命だと行って、生ゴミから堆肥を作ってたんだ。
それから堆肥作りも手伝わされた。
5月とは言え、晴れた日の日射しは強くて汗だくになった。

午後は学校からドッサリ渡されたプリントをやって、夜は8時にもなると、もう目が開かないぐらい疲れてて。

こっそりキスしたり、抱き着いたりする暇もない1週間だった。



「だけど、楽しかったね。
しょーちゃんと一緒で、楽しかったな。」



「そうだなぁ…
畑に虫がいたじゃん?
ああいうの、久しぶりに見た気がするしな。」



難しい顔した しょーちゃんに元気になって貰いたくて話し掛けたのに。
色々思い出してたら、涙が出てきたから、下を向いた。


しょーちゃんの腕が肩に回されて、掌で頭を撫でてくれる。

それから下を向いてるオレの前に、ハンカチが差し出された。



「このハンカチさ?
綺麗にアイロンがかかってるだろ?
このアイロンかけてる人、すっげー、優しくて、カッコよくて、頼りになるからさ?
これで涙拭いたら、雅紀も元気になれると思うんだ。な?」



「ふふふ〜、そのハンカチにアイロンかけてる人って…
ハンカチしかアイロン出来ない人でしょ?
朝、ひとりで起きれないし、靴下だって履かせないと会社に遅刻しちゃう。」



「お前さぁ、、泣いてるくせに、そこまで言うか?」



ハンカチしかアイロンできなくても、靴下履かせないと会社に遅刻しちゃっても、やっぱり、しょーちゃんが大好きで、しょーちゃんしか居ない。



「なぁ、雅紀…
来月さ?ファーストキス記念日にどっか出掛けない?」



「うんっ♪どこ行く?」



「アラシナルド!(ドヤッ)」



「んもぉ!ふふふ〜、でも、アラシナルドいいかも。」



しょーちゃんを見たら、難しい顔が取れて、やっと、ほんわかした表情になってた。





…おしまい…
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