CuteなSugar
□ヒーロー
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櫻葉【ヒーロー☆1】CuteなSugar
各駅に揺られながら、しょーちゃんは、オレの手をギュっと握りしめてくれる。
その、かわいい横顔は、唇を固く結んで少しだけ目が潤んでる。
きっと、あの日のことをまだ気にしてる。
オレ以上に胸を痛めてるって知ってるから。
オレはしょーちゃんがいたら解決しちゃうけど、しょーちゃんは、いつまでも胸を痛めてる。
しょーちゃん、オレ、もう大丈夫だから。。。
あの時、しょーちゃんの取った行動が嬉しかったし、それだけで充分すぎるぐらい。
*あれは高校2年の5月だった*
高校1年の終わり、多分、春休みぐらいからだったと思う。
帰り道、気づくと後を付けられている気がしていた。
でも毎日じゃなかったし、しょーちゃんが一緒の日も多くて、深く考えないようにしていた。
それでも、ひとりで帰る時には、後ろを気にしていたんだけど。
それがいけなかったのかもしれない。
いつもみたいに後ろを振り返った時、脇から誰か出てきていたのに、振り返ってたから気付くのに遅れたんだ。
いきなり殴られて、腹を蹴りあげられて、植え込みの向こう側へと引き摺りこまれた。
そいつがオレを押し倒して、シャツを勢いよく破ってきた時に、やっとわかったんだ。
だって、男だからさ?
まさか、そういう形で狙われるなんて考えたこともなくて…。
たまたま通りかかったしょーちゃんに助けられて…。
そこからは、よく覚えてない。
起きたら、目の前にしょーちゃんの顔があって、一緒に寝て貰ったことは思い出したけど。
朝、父ちゃんがしょーちゃんの家にきて『病院行くぞ!』って。
しょーちゃんに着いて来て欲しかったけど、しょーちゃんは少しだけ部活に出るから、終わったらオレんちに来るって約束してくれたんだ。
約束通り、しょーちゃんは午後少し回った頃に来てくれた。
「病院、どうだった?」
「うーん、、、診断書がどうこう言ってたけど、父ちゃんがちゃんとするからって。」
まだ、子供だった。
しょーちゃんもオレも・・・。
大人になったつもりだったけど、こういう時、自分たちじゃ何も出来ないんだなって思ってた。
「そっか…雅紀の父ちゃんがそう言うなら安心だな。」
「なぁに、それ?」
「だって、雅紀の父ちゃん、迫力あるじゃん?」
そんな風にしょーちゃんが言うから、しょーちゃんもオレと同じように、まだまだ自分を子供だと思ってるんだって、そんなこと考えてた。
「それから、、、しょーちゃん?
あの、オレね、、少し休む。
学校、、少し休むことにした。
少しっても、怪我が少し治るまでだけど…
しょーちゃん、、朝、行ける?
オレが居なくても、遅刻しない?」
「お、おぅ・・・
じゃ、帰ってきたら勉強教えてやるから、な?」
「しょーちゃん?
遅刻したら、勉強も教えて貰えなくなるんだよ?
ほんとに、大丈夫?
朝、支度だけでも手伝いに行こうか?」
「大丈夫だから!
あー、何年ぶりかで、自分で靴下が履けるなぁ〜♪」
しょーちゃんが、すっとぼけた顔して、そんなこと言うもんだから、ついクスっと笑ってしまう。
ほんと、しょーちゃんは、こういうとこがかわいい人なんだ。
「あっ!あぁ、やっと笑ってくれた…
良かった、、雅紀がもう笑わないんじゃないかと思ってた。。。」
しょーちゃんが変なこと言い出して、急に抱き締めてくるから、涙が出てきてしまう。
「しょーちゃん、、、グスッ」
「雅紀!お前の分も勉強してくるから、後は俺に任せとけ!」
勉強ぐらいでオーバーだなぁ、、、そんな言い方だったけど、しょーちゃんの腕の中が気持ち良くて、ただ頷いた。
…つづく…