CuteなSugar
□ヒロイン
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櫻葉【ヒロイン☆3】CuteなSugar
父親たちと警官が話してる時、やっと鞄を捨ててきたことを思い出して、それを言うと、現場を見たいからと、父親、警官、俺で取りに行くことになった。
警官には現場の場所とか、犯人の逃げていった方向を説明して、『公園は危ないから外灯がある歩道を利用して』なんて、頓珍漢な話をされて帰ってきた。
帰ってくると、母親と雅紀の母ちゃんが雅紀の傷の手当てをしてて、俺のスウェットに着替えてた。
「ママ、雅紀、今日うちに泊めちゃダメ?」
「ママはいいけど…」
「明日、休みだし、雅紀のこんな怪我見たら、雅紀のじーちゃんとばーちゃんがびっくりするし。
先に話だけする時間あったほうが…」
雅紀の母ちゃんから『翔くんはいつも気が利くのね』なんて涙流しながら言われたけど、雅紀を帰したくなかっただけだ。
一緒に帰れなかったことや、あと少し早く気付いていたら、怪我が少しでも減ったのにとか、悔やまれてならないことばかりで、懺悔したい気持ちだったから。
今までだって泊まるなんてしょっちゅうで、親同士も仲が良かったし、すぐに承諾されて、母親は雅紀の母ちゃんの背中を擦りながら部屋を出ていった。
「雅紀、痛い?」
「だいじょ、ぶ、だから…」
「今夜は俺がついててやるからな!
雅紀、そのままベッド使っていいから。
俺、寝袋あるしさ?」
クローゼットの上に、キャンプで使った寝袋がある。
泊まる時には、二人で潜って遊んだこともある。
取りに行こうと立ち上がったら、雅紀が俺の腕を掴んでくる。
「しょーちゃ、ん、、
一緒が、いい…」
「え?」
「だめ?」
「いや、、えっと・・・
狭くない?」
雅紀は声にしないで首だけ振った。
そこで気が付いた。
俺の腕を掴んでる雅紀の手がまだ震えてる。
まだ、怖いんだ…。
ほんとは、怖い?って聞き返したかったけど、嫌なことを思い出させるような気がして、言えなかった。
だからベッド脇の小さいランプだけ灯すと、部屋の電気を消した。
「雅紀が壁側にいって。
落ちたら痛いし、俺は落ちても慣れてるから。」
雅紀の身体を少し壁側に移動させるように手伝ってから、俺も横に並ぶようにベッドの中に潜り込む。
横に並ぶだけで、雅紀が身体全体で震えてるのが伝わってきて、また鼻の奥がツンと痛くなって涙がこぼれそうになった。
仰向けだと少し狭くて、それに震えてる雅紀が気になって、身体を横向きにして雅紀のほうを向いたら、雅紀もこっちを向いてくれた。
幼馴染みでも、こんな風にまともに向き合ったことがなくて、なんだか照れ臭かったけど・・・。
抱き締めてみたい、そう思ってしまう。
「あ、あのさ?
やっぱり、俺、落ちそうだから…
腕枕してもいい?だめ?」
「いいよ…」
雅紀の首の下に腕を通す。
初めてだったし、よくわかんなかったけど、、。
反対の腕は、雅紀の脇腹の上から背中に回して、雅紀の顔が俺の胸にギュっとくっつくように抱き締めた。
あ、あぁ、、、すげー、ドキドキする。。。
しかも、すげー、抱き心地がいいんですけど!
こんな風に人を抱き締めたことがなくて、、、。
というより、こんな風に抱き締めたいと思ったことが初めてで…。
「雅紀、俺の腕重くない?」
「ん、、だいじょぶ。
しょーちゃん、腕痛くないの?」
「枕の隙間に入ってるし。。。
雅紀、俺・・・お前を守るから。
俺、ちっぽけで頼りないかもしれないけど。
ずっと、ずっと、守るから…
だから、安心して寝ろ。な?」
「ん、、しょー、、ちゃ、、グスッ
こ、、グスッ、、こ、怖かっ、、、グスッ…」
気が緩んだのか、雅紀がやっと泣き出した…そんな感じの泣き方だった。
***
後から聞いた話だけど、雅紀が気が付いてから、数ヵ月は後を付けられていたらしい。
もっと早くに相談に乗っていたら、あんな怖い思いをさせなくて済んだのに…。
各駅電車に揺れながら、あの夜のことを思い出す。
「雅紀、、ごめんな。
もっと俺が早く気が付いてたらさ?」
「しょーちゃんのせいじゃないよ…
謝るのオレのほうだし。。。
いつまでも、ひとりで帰れなくて…迷惑かけてばっかだし。」
「お前、そんなこと言うなよ?
そんな言うなら、俺なんか、雅紀がいなかったら靴下も履けないんだぞ?
会社だって寝坊しまくりで、今ごろクビだぞ?
いや、幼稚園の頃からだから、雅紀がいなかったら幼稚園も卒園出来なかったかもな。」
「ふふふ〜、じゃ、おあいこだね。
しょーちゃん、いつもありがと。」
雅紀には言わなかったけど、繋いだ手は小さく震えている。
何かあった日は、いつも震えている。
だから、いつまでも後悔が拭えない。
迷惑とか、そんなんじゃなくて、雅紀の気持ちを考えると一生消えない傷なんだってわかるから。
「ずっと守るから…
だから遠慮なく言えよ?」
「うん・・・
それにさ?あのことがあったから、今があるのかも。。。
しょーちゃんパパ、言ってくれたじゃん?」
「まぁな・・・」
確かに、あの事件が発端だったのかもしれないけど。
でも、そんな事件がなくたって、俺は雅紀とずっと一緒にいた。
そこだけは自信がある。
俺の父親の話は、また別の機会にでも…。
…おしまい…