CuteなSugar

□ヒロイン
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櫻葉【ヒロイン☆1】CuteなSugar




「遅くなったけど座れるし各駅に乗ろうか?
少しでも、人が少ないほうがいいんじゃないかな?」



今日は俺の仕事が忙しいとわかっていたから、雅紀は先に帰るはずだった。

でも、今朝の出来事がそれを妨げることになる。

今朝、満員電車の中、雅紀に異変が起こり、軽い貧血で倒れかけた。
向かいに座っていた人が席を譲ろうとしてくれたけど、次で降りることを伝え、なんとか持ちこたえてくれた。

会社まで着いて、それから俺は仕事だったけど、雅紀は医務室で1時間ほど休ませて貰えたらしい。

昼には顔色も戻って、『一緒に食堂に行こう』と俺の部署に誘いに来てくれた。

そこで雅紀から『待ってるから一緒に帰りたい』と言われ、俺も一人では帰したくなかったから、雅紀には仕事が終わると、会社の休憩室で待っていてもらったんだ。

雅紀の貧血の原因は、痴漢だった。

雅紀は中性的な見た目や華奢な体付きが原因なのか、、、もしかしたら俺が一緒にいるために性別を誤解されやすいのかもしれない。

髪が少し伸びてくると、より中性的になるし、、、それとも男女共に狙いたくなるタイプなのか…。


これは今に始まったことじゃなかった。




*あれは高校2年のゴールデンウィーク明けだった*



部活の話し合いが長引いて帰りが遅くなった。
改札口を抜け、家まで歩いて帰るのが、だるい。

いつもは雅紀がいるから、その道程は楽しいけど、こうやって帰りが別々になると、家までの距離が2倍にも3倍にも感じられる。


改札口を抜け、ロータリーの向こう側にあるアラシナルドから、フライドアラシの匂いが漂ってきていた。



腹減ったしなぁ…。
ママに電話して迎えに、、、。


あれ?


アラシナルドから、雅紀がひとりで出てきて、そのまま家の方向へと歩き出した。


勉強でもしてたのかな?
でも、雅紀がひとりでアラシナルドなんて珍しいし、母ちゃんと喧嘩でもしたのかな?
いや、じーちゃんから何か厳しく言われて帰りづらいのかも?


ロータリーにバスが入ってきて、バスが通るのを待ってから、雅紀を追い掛けようとしたんだけど。

家に向かっていたはずの雅紀が、急に少しUターンして走り出すと、俺に気付かないまま通りを渡りコンビニへと入っていく。


あんなに、慌てて・・・♪
トイレか?


俺も、雅紀を追うようにコンビニへと向かった。

雅紀はトイレにいるものだと思って、出てくるまで店内をウロついていたら、カップ麺の前で雅紀がしゃがみこんでいたんだ。



「うぉっ!トイレじゃねぇの?」



「うわっ、、しょーちゃんか…」



「アラシナルドから出てきたの見掛けて…」



アラシナルドから出てきたのに、カップ麺?
お前は、どんだけ喰うんだ!?


俺はコンビニの人に遠慮する気持ちもあって、雅紀の隣にしゃがむと小声で言った。



「カップ麺なら・・・帰り道にあるカネナシスーバーのほうが安いぞ?」



「あ、、、うん・・・
あの、しょーちゃん、帰る?」



「おぅ!カネナシ寄ってくか?
付き合うし・・・」



「ち、違うの、、ちょっと来て…」



雅紀は俺の手を引いて、今度はサンドイッチやおにぎりが置いてある棚の前に移動する。



「あっ、しょーちゃんの好きなやつあるよっ!」



急にデカい声で言ったと思ったら、『付けられてる気がする、オレ…』と耳打ちしてくる。

思わず耳を疑ったけど、雅紀が後方を気にするから、俺もデカい声の会話の合間に聞き返した。



「こっちも好きなんだよなぁ・・・」



『どいつ?コンビニにいる?』と聞くと、雅紀は『雑誌の前にいるグレーの背広の人』と教えてくれた。



「よしっ!そんなに腹減ってんなら、俺が奢ろう!」



俺は、カモフラージュのために、おにぎりとサンドイッチをひとつずつ選ぶとレジに行き、支払いを済ませて、雅紀を連れてコンビニを出た。


雅紀と歩き出す時、少し振り返ると、コンビニのガラス越しにそいつが顔をあげ、雅紀に視線を向けているのを確認する。


雅紀の言うことは、本当なのかも?


そこからは、二人でいつも通り、学校の話をしながら家まで帰った。






…つづく…
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