CuteなSugar
□バレンタイン
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【バレンタイン☆1】CuteなSugar
仕事が終わると、オレはすぐに帰って、バレンタイン用のお菓子作りを開始した。
しょーちゃんは今夜は接待で遅くなるって言ってたから、テーブルにお菓子とプレゼントを用意しておくつもり。
しょーちゃんにバレンタインにお菓子を作るのは、何回目になるんだろう?
一緒に暮らすようになって、手伝って貰ったこともあるし、しょーちゃんが作ってくれた年もあったし、一人の時は、こうやって、こっそり準備することもあったっけ。
初めて、しょーちゃんにチョコを渡したのは、高校1年の時だ。
それまでは、毎年、バレンタインといえば、どっちがチョコをたくさん貰うかの競争をしてたけど。
*あれは高校1年の2月*
高校に入学して、しょーちゃんが急に大人っぽくなっちゃって…。
なんだか遠い存在に感じることがある。
しょーちゃんは幼馴染みだったはずなのに、初めてしょーちゃんを幼馴染み以外に意識したのは14歳の時だった。
小学生の時なんて、ちっちゃくてさ?
いっつも近所の、りっちゃんにいじめられて泣いてた。
いっつもオレのとこきてさ?
オレの背中に隠れて『まさきがやっつけてよ』なんて言って泣きべそかいてたのに。
なのに、中2のしょーちゃんの誕生日に、りっちゃんから告白されてた。
それを偶然見た時に、すげー焦って、しょーちゃんを取られたくないと思って・・・。
なぜか、オレも告白しなきゃって思った。
でも、そんなこと出来るわけもなくて、中学生活は終わった。
色々あって、同じ高校に行けることになって、オレのテンションはマックスだったけど。
入学して少ししたころから、現実を叩きつけられたんだ。
月に1回、、いや多い時は、週に1回は告白される、しょーちゃん。
オレは朝も帰りもしょーちゃんと一緒だけど、決まって告白する女の子は、オレの存在が邪魔だという顔をする。
しょーちゃんは誰とも付き合わなかったけど、それでも、いつかは誰かと付き合っちゃうんじゃないかって焦るオレ。
しょーちゃんは、どんどん色っぽくなるし、背も伸びたし、かっこいいし頭もいいし、部活だってレギュラーになる勢いでうまくなって目立ってるし。
最初は、《新一年生の櫻井》だったのが、そのうち《嵐高の櫻井》ってぐらい有名になった。
まぁ、それは多分だけど。。。
だから、オレも早く告白しなきゃって思うのに、幼馴染みという肩書きが邪魔してる。
告白しなかったら、いつまでも幼馴染みとして一番近い存在でいれるのにさ?
もしだよ?玉砕したらさ?
いや、玉砕するに決まってる。
だって、オレは幼馴染みのかわいいおんなのこじゃなくて、幼馴染みのおとこなんだから。
だけど、バレンタインなんてなったら、1トンぐらいのチョコを貰ってくるんじゃないかな?って。
そしたら、その中にはしょーちゃんが好きになる子がいるかもしれない。
オレは、手作りなんたらって本を見てた女子にリサーチして、初めて手作りするなら、チョコペンでメッセージを書くのが一番簡単だよ、セットで売ってるよって教えてもらった。
もちろん、妹なんていないけど、女子には『妹に相談された』と誤魔化して。
だけど、バレンタインのコーナーに行ったら、おんなのこだらけで込み合ってて、とてもとても、そんなチョコペンセットを買えるような状態じゃなかった。
よくよく考えたら、男からチョコ貰っても嬉しくないよな?
だから売り場だっておんなのこしかいないんだ。
チョコ以外のものって考えたけど、何も計画してなかったオレの財布の中身では、たいしたものが買えそうもなかった。
あてもなく売り場をウロウロして、バレンタインのせいで忘れられたチョコに目がいって、オレはこれに決める。
アルファベットチョコ!
これでメッセージを作って並べたらいいかもしんない。
すぐにそれを買って家に帰ると、メッセージを決めた。
SUKIとか、I LOVE YOU にしたかったけど、さすがに恥ずかしくて、オレは、チョコを
ARIGATO と並べた。
図工は好きだったから、厚紙を箱の形にして、その中にチョコを動かないように並べたら、母ちゃんから家にあったかわいい袋をひとつ貰って、箱を入れると、サインペンで“しょーちゃんへ”と書いた。
よし!完璧!
オレの女子力を見せてやるっ!
バレンタイン当日、3年生の受験シーズンとあって、先生が忙しくてどの部活も休みになった。
で、オレは、計画してたから、しょーちゃんとは帰らずに最後のホームルームが終わった瞬間、駅までダッシュする。
ダッシュすれば、ひとつ前の電車に間に合うはずだから。
直接渡すのは恥ずかしいからさ?
しょーちゃんより先に帰って、あのチョコをこっそりポストに入れておこうって思ってたんだ。
…つづく…