CuteなSugar

□プロローグ
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【プロローグ】CuteなSugar




「しょーちゃん、出たぁ?
ほら、また走らないと間に合わないよ!」



玄関を開けて、オレは靴も履いて、トイレから出てくるしょーちゃんを待ってた。



「わかってるよ…もう出るから。
あっ!雅紀、鍵ある?」



「あるからっ!早くっ!」



トイレから出てきたしょーちゃんは暢気にベルトを締めてのんびり靴を履いてる。

時計を見たら、47分!
これだと、しょーちゃんの手を引いて、ちょっと強引に走らないと、急行に間に合わなくなる!



「しょーちゃん、鞄貸して!」



オレはしょーちゃんと自分の鞄を片手に持って、片手はしょーちゃんの手を取って駅までダッシュした。


しょーちゃんとの朝はいっつもこうだった。

幼稚園から、ずっとこんな毎日だったんだ。

もう長いこと、しょーちゃんの手を引っ張って走ってきた。


頭もよくて、勉強もできたけど、しょーちゃんは朝が弱い。
いつも夜更かしすんなって言ってんのに、夜になると忘れちゃうみたいで、いっつも夜更かししてる。


ギリギリセーフで急行に飛び乗って、いつもみたいに車両の連結のほうへ行った。

ここは、まだいいけど、次の駅から、ちょー混雑するからね。

やることは今のうちに済ませとかないと。
オレは自分のスーツのポッケから、ハンカチをひとつ取り出して、しょーちゃんのスーツのポッケに入れる。

それから…



「しょーちゃん、オレの鞄持ってて?」



今日もネクタイが曲がってる。
というか、今日は曲がってても締めてきただけマシだけどさ?

ほら、寝癖だって綺麗に直ってない。



「雅紀ぃ…もういいからさ?」



「よくないでしょ?」



「いいって…会社で直すからさ?」



そう言うと、オレに鞄を戻して、自分の鞄で座席の人から隠すようにして手を繋いでくる。

どうせ次の駅についたら、手なんか繋げなくなるけど、たった数分間の二人の時間。



「しょーちゃん、今日、一緒に帰れる?」



「今日は、、あー、部長と接待だ。」



「部長って、櫻井部長?」



「そう…あの人、飲んだら長いいからなぁ・・・」



じゃ、今夜は、遅くなるな。
櫻井部長は、しょーちゃんと名字が同じだからって、やたらと付き合わせるんだ。

たまに、しょーちゃんに色目を使ってるようなときもあるし、オレは心配してんのにさ?



「部長、怪しいから飲み過ぎちゃダメだよ?」



「わかってるよ…
雅紀、待ってないで先に寝てろよ?」



「うんっ♪」



こうやって、お兄ちゃんぶって、オレのことを心配してくれるしょーちゃんが大好きっ♪



「じゃないと、俺、明日も起きる自信ないからさ?」



こうやって、鈍感にオレを地獄に落とすしょーちゃんには、足を踏んでやるっ!グイグイ!



「イテテッ、、なんだよ?」



「帰ったらシャワーぐらいしなよ?」



「えー?自信ないなぁ?」



すっとぼけて言ってるけど、はなっから浴びる気ないじゃん!?



「じゃ、浴びてなかったら、朝、30分早く起こすよ?」



「お願いします。
えーっとね、、今日はハートついてたやつかな?
雅紀がくれたやつ。」



ほらね?
浴びる気ないから、ちゃーんとパンツの柄を覚えてきてる。



「わかった…」



別に、パンツを履き替えたか見なくたって、しょーちゃんをクンクンってしたら、シャワーを浴びたかどうかわかるけど、このことはオレの楽しみだから、しょーちゃんには言ってない。

そんなことも知らないで、しょーちゃんはいつもパンツの柄を教えてくれる。


どうか、しょーちゃんがシャワーを浴びませんように…。


オレは、中吊り広告の仏像に祈ってみた。







***
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