Daylight


□【94】〜
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櫻葉【99】◆Daylight◆





「俺に感謝?」



「かつて“魂”という形のままで、そんなに愛した人はいなかったから…。」



ニノの過去をすべて知ってるわけではないが、きっと“魂”として過ごす間には、辛いこともあるんだろう。



「正直言うと…
今のままでも満足というか。
雅紀には目を覚まして欲しいけど、今の雅紀を失うのも怖いんだ。」



「上層部も、そのことを懸念しています。
でも私は、今のまま過ごして…
相葉さんが目を覚ました後のことは、その時になって考えて欲しいんです。」



「それは、どうして?」



「相葉さんに、生きたいという気持ちが増えてます。」



「それって…」



「目を覚ます確率が上がってるということです。」



喜ばしい報告のはずなんだけど。
その先を想像出来ないでいる。

雅紀が目を覚ませば、“魂”の雅紀は一旦俺の前から消えるんだ。


ニノは、上層部とニノ本人の考えを教えてくれた。


今の関係を続けているほうが、目を覚ます確率は上がっていきそうだ、ということ。
ただし上層部は、前例がないから、今の関係を止めに入ろうとしている、ということ。




「禁止されたら…?」



「それもあるし、、、
翔さんも悩んでますよね?」



「あぁ、、」



このままの関係でいれば、“魂”の雅紀から抜け出せなくなりそうだ。



「だから、上層部に交換条件を出したいんです。
禁止を承諾する変わりに、、何か?
翔さんが希望することはありませんか?
ひとつぐらいなら掛け合えると思うんで…」



いきなりの提案だったけど、真っ先に思い付いたことがあった。

それが叶えば、“魂”の雅紀と一旦離れることになったとしても、心持ちが違うかもしれない。



「生身の雅紀に会いたい…
目を覚ましてなくていいから。
生身の雅紀を知ってみたい。」



「なるほど…
難しいかもしれませんね。
それは“運命”を運命で無くしてしまう可能性があるから。」



「なぁ、この際、運命なんか、もういいだろ?
俺は雅紀が好きなんだ。
ただ、それだけだ。
運命なんかなくたって、雅紀と一緒に居られたらそれでいいんだよ。」



「わかりました…
一応、その希望を交換条件として受け取っておきます。」



話しは終わりだ、というように、ニノがソファから立ち上がる。

俺に背を向けたまま、その存在がうっすらと空気に包まれたと思ったら、ニノが振り返った。



「それから…
魂は、出血はしません。
欲を吐き出せた前例もなかったんで。」



「お前っっ!」



文句のひとつでも言ってやろうと思ったのに、もうニノの姿はなかった。






…つづく…
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