Daylight
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櫻葉【150】◆Daylight◆
「オレからのお願いは、ちゃんとなってるんだよね?」
次にマニーちゃんが生まれ変わる時には、
オレとマニーちゃんの“魂”や“命”は、またひとつになって、生まれ変われるって聞いたから。
オレは、マニーちゃんが自分の運命を背負っていた場合、
しょーちゃんと、マニーちゃんで運命を共にして、、、。
来世こそは、、って思ってた。
だから、しょーちゃんの相手を違う誰かとって、、
“運命の操作”をしないで欲しいって。
「それは、来世に繋がるようにはしています。
相葉さん、、、猫が来世を迎えるまで、ひとりで待てますか?」
「オレ、、待つよ?
オレは大丈夫だからさ?
だから、ニノは自分の人生を選んで…」
それから、ニノが“置き土産”だと言って、
入院してるオレに、しょーちゃんが会えるように手配してくれたんだ。
「相葉さんの力が弱ってても…
直接触れ合うことで、翔さんのほうが、あなたの命を引っ張り上げてくれるかもしれないから。」
「ニノ、、無理したんじゃないの?」
「ただし、私はその日に出発します。」
そして迎えたニノと最後の夜。
オレは、しょーちゃんのところへは行かなかった。
「相葉さん、、今日は、もうひとつサプライズを持ってきました。」
病院のテーブルに置かれた白い箱は、
持ち手のあるタイプで、すぐに中身はわかったんだけど…。
「でも、、オレ…………」
箱を開くと、予想通りケーキが入っていた。
艶のある焦げ茶色のチョコレートでコーティングされている。
甘い、、、ん?
甘い、匂いがする。
「これは特別なケーキなんです。
味も匂いも、、相葉さんにもわかるように…」
「ニノ…………」
「1年以上も味わってないでしょ?
少しは生きてるということを思い出せればと。」
意識がないまま寝たきりのオレの病室には、
お皿やフォークなんてものはなかった。
だから、二人で手づかみでケーキを頬張った。
口の中は、甘くてチョコレートが溶けてるはずなのに、
オレは、胸がいっぱいで、涙ばかり出てきちゃって、
味なんてわからなかったけど、
ニノの気持ちが嬉しくて…。
「ニノ!
オレ、絶対、目を覚ますから!
だから、だからっ!
人間になったら、また会おう?
ニノはオレの友達だろ?」
「相葉さん………」
ニノの目から涙がコロンっと零れたから、
掌で掬った。
そのまま頬を包み込んで、
ニノのほっぺたにチューってしたんだ。
「あ、、相葉さん?」
「オレからの餞別。
オレ、、何も持ってないから…」
「相葉さん、必ず生きて下さい。
生きてるということを諦めないで下さい。」
ニノは、別れ間際まで『諦めないで…』と繰り返した。
わかってるよ、ニノ。
オレね、ニノのためにも…。
ニノに安心して貰うためにも、絶対に目を覚ますから。
だから、待ってて。
…つづく…