Daylight


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櫻葉【31】◆Daylight◆




仕事で外出した時、一軒の店の名前に目がいった。


《ことさらこっとん》


店は、外からでも天然素材の物を取り扱っているとわかる。


少し前から考えていたことがある。


それは雅紀に肌触りの良いシャツを着せたら、身体に透けないんじゃないか、ということ。

抱き枕と同じになるんじゃないか、と。

もし成功すれば、うまくいけばだけど、抱き締めることが出来るかもしれない。


だから、外出ついでに時間がある時には、普段は寄らないような服屋に足を運んでいた。

けれど、どれも似たり寄ったりで、なかなか“これ”というものは見つからない。



こっとん専門店か…。



淡い色調の店に足を踏み入れるのは少し躊躇いがあった。

こういう店は、基本的に女性がターゲットだろうから。


でも、チラっと見た限りでは寝具らしいものが置いてある。


寄ってみるか…。



店内に入ると、まず石鹸のような薫りに包まれる。


雅紀みたいだ…。


雅紀の匂いなんて知らないけど、直感で雅紀みたいだ、と思う。
だから、この店に足を踏み入れて良かった、と思うことにした。



「何かお探しですか?
そちらの枕カバーは人気ですよ。」



店内に入り、まずは寝具のようなものを置いてる場所に向かった。
そこが一番無難だと思ったからだ。
何故なら…女性の下着なんかが置いてたら困る。



「あぁ、枕カバーね、これ…」



いつもなら、この手の接客は苦手だったけど、ウロウロするより聞いたほうが早いだろう。

欲しいものがなければ、この枕カバーを買って退散すればいいんだし。



「あの、、シャツあります?
紳士物で、サイズは僕ぐらい…
肌触りが良くて、、
部屋着みたいな感じのでも
普段着でも、、。」



何か勘繰られたらと余計な心配をして、しどろもどろになった。
暑いわけでもないのに汗まで出てくる始末だ。


俺、何やってんだ…。



「ありますよ。
こちらです。
肌が弱いほうですか?」



いくつか質問をされ、店員に案内されていく。



「肌、、弱いのかな…
えっと贈り物、、いや御礼みたいな、、
肌触りの良いものが好きだと聞いて…」



「でしたら、こちらか、こちら…
こちらは部屋着にもなるタイプで、同じ素材のパンツも揃ってます。」



店員に手渡された瞬間、これだ!と思った。

柔らかいのに肌にしっとり馴染む感じが、あの抱き枕に似ていたからだ。


強いて言えば、丸襟で少し女物みたいだったけど…。

部屋着にするなら、いいよな?

それに、かわいいほうが似合うかもしれないし。


ニヤニヤしてしまいそうな自分を、精一杯のポーカーフェイスで誤魔化して、そのシャツと枕カバーを購入した。






…つづく…
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