第1章

□【第2節】プロ意識!ふぉ。
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今日はデビューシングルのレッスンの日。
レッスン場で皆がストレッチなどレッスンに備えてる中、気だるそうにやってきた二人の姿があった。二人が入室した途端、皆の視線が一斉に彼女たちに集まった。

欅のジャイアンと女王様のお出ましだ。

彼女たちは志田愛佳と渡邊理佐。二人ともかなりの美形で背が高いということもあり、欅坂46の中でも目立つ存在だった。二人ともクールなことからザ・クールというあだ名が付いている。

今日は彼女たちの印象をよく表した1日だった。それは休憩中の時のことだった。理佐があまり体調が芳しくないのか、志田にもたれかけながら声を掛けた。

「ちょっとだるい……」
「んー夜更かし?」
「急に体が変わっちゃってるし、いろいろ参るじゃん? マジない。ありえない」
「その割にピンピンしてたじゃん」
「はっ?」
「お前朝ちょっと…」
「なに」
「勃ってたじゃん?」
「うるさい!」
「エロ男子」
「うざ」

朝っぱらぶっ放してくるザ・クールのJK満載下ネタトークに思わず俯く皆。爆笑してるのは織田だけだった。

「おだなな聞いてよ。 こいつマジやべえの」
「愛佳、黙って」

理佐の制する手を無視して織田に耳打ちする志田。

「えぇ! おっきいの!?」

大声でリアクションを取ったことにより、耳打ちの意味はなくなった。「ありえない」「うざい」を連呼する理佐と爆笑する織田と表情一つも変えずになだらかに話す志田。


ある時は、尾関がザ・クールと絡んでいた時のことだ。

「おりか。絶対小さいでしょ」
「まともに腰振れなそう」

出た。ザ・クール得意のメンバー弄り。この二人の弄りは悪気はないんだろうけど、少し当たり強いからあまり関わりたくない。

「そんなことない……」
「じゃあやってみてよ」

二人の煽りにまんまと乗せられた尾関は腰を振ろうとするが、毎度お馴染みの尾関スタイルを発揮した。傍から見て腰振ってるというよりは、ヘッドバンをしているようにしか見えなかった。

「……ぷっ。 なんか感電してるみたい」
「いはははっ!」

志田の高い笑い声がレッスン場に響く。尾関は顔真っ赤にしながら違うもん違うもんと反論している。

(下品……)

「すごいですね……」
と、手で口を覆いつつもニヤけてる口を隠せてない莉菜。
「もー場所考えてよ……」
と、文句言いつつもニヤけるのが抑えきれない茜。
ニヤニヤが前面に出まくっている米谷。
通常運転だなと呆れ顔を浮かべる美愉と結衣。
むーとしかめっ面をしている葵。
ただでさえメンバーと馴染めてないのに、二人の強烈なトークに驚きを隠せないねるが少しお気の毒に思えた。

「……あの二人、もうしてんのかな?」

誰もが思っていたことを冬優花が代弁した。
「えええっ」 と、驚いてはしゃぐ米谷。
「こら、あかん! しーっ」 と、彼女も思っていたに違いないがすかさずツッコミをいれる美波。

「想像しちゃうじゃん!」

あの二人のことだろうから猿同然のセックスとかしてるんじゃないかな。本当どうでもいいけど。

私はザ・クールが苦手だ。厳密に言うと志田愛佳が苦手だ。彼女からはプロ意識を微塵も感じない。長濱ねる加入の件も放送前に友達経由でバラすとか危機管理の欠如にもほどがある。彼女と関わると私のイメージも損なうから距離を置くようにしている。

「皆さん、ちょっと一回合わせましょう!」

平手のかけ声によって、メンバー一同レッスンモードに入る。まだ14歳で最年少なのに、メンバーを引率する立場になっている。それに引き換え、志田はというと……ポジションでは私の真後ろにいるので振り返ると、彼女は大きな欠伸をしながらお尻をかいていた。この人の仕事に対する意識には本当うなだれる。これ以上、見ると精神衛生上よろしくないと思った私は前へ向き直った。
平手の頼もしい背中に惚れ惚れしながら今日もレッスンに励む。

**イラスト**

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