Absolute ruler1

□取引
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走る。走る。走る。

ゾルディックの屋敷まであと…



『いつも思うんだけど…長い』



そう、長い。

道のりが、とても長い。

私の念には空間移転系が存在しない(空は飛べるが)

できることは速く走るってことぐらい、余計な燃費を避けるべく念は使わずただ走る。



『ミケの背中に乗れば連れてってくれたかなー』

「無理だと思うけど」

『さすがのミケも家族はどうだか知らないけど、他人は乗せてくれないかー』

「ねえ、気付いてたんでしょ、オレの事」

『なんだよイルミ、わざわざ出迎え?』



確かにイルミが並走してついてきてたことはわかってた。

でも特に害することもされてないし、放置でいいと思って何も話しかけなかったんだけど…



「オレ、気配できるだけ消してたんだけど」

『あっそ』

「どこで気付いた?」



どこって…



『ミケとすれ違ってから3分後くらい』

「つまり、オレが降りてきてるってわかってたことだよね」

『まー、最初は執事かと思ったけど、速いし明確な殺意もなかったからシルバかゼノさん、それかキキョウさんかなって思った、執事だったら殺すつもりでこっちに来るだろうしね』



執事は殺気を出さないわけじゃない。

むしろ露骨なくらい出してくる。

彼らの任務は暗殺ではなく、侵入者の排除なのだから。



「殺そうかなとは思ったよ」

『無理だって気付いただろ?』

「まあ、本気でやり合ったら山削れて親父たちに怒られそうだし」



…うん、確かに怒られそう。

シルバは無言の圧力かけてきそうだし、ゼノさんは小言で攻めてきそうだし、キキョウさんはヒステリックになって問い詰めてきそう。

それは面倒。

アッチに逃げるってのも手だけど…そしたらここに来づらくなる、それは勘弁願いたい。



「●●●はなんでここに来たの?」

『会いに来たんだよ』

「キルに?でも今お仕置き中だから会えないと思うよ?」

『―――アルカに』



―――ゾワッ


イルミから莫大な殺気が送られてくる。

これはちょっと色々とマズい。

シルバやゼノさんから小言もらうの決定したわ…



「アルカって言ったの?なんでアレのこと知ってるの?アレのこと知ってるのは家族以外ありえないんだけど」

『アルカをアレ扱いするなよ、私が暗黒大陸出身なのは知ってるな?』

「それは初耳…外の世界があるってことは少し知ってる、親父には行くことを止められた」

『アルカの中にイる子は暗黒大陸の子でね、少し特殊なんだよ、シルバとはそれが縁で出会ったと言っても過言ではないよ』



アルカの中にあの子がいるってわかったから私は嫌々だけどゾルディックと関わりを持つことにしたぐらいだし。



『アルカは私を姉と慕ってくれてる、今回はキルアというよりもアルカが目的だよ』

「…ふぅん…」

『アルカは元々…いや、これはいいか、アルカに一度聞いたことがあるんだ、暗黒大陸に帰りたいか』

「まだいるってことは帰らないを選んだんだね」

『理由はキルアだったけどね』



アルカは私を姉と慕うみたいに、キルアを兄と慕っている。

それはキルアだけがアルカと中の子、ナニカを妹として見て、可愛がってあげていたから。

そして、キルアがナニカに名前をあげたから。

アルカとナニカにとってキルアは、なくてはならない大切な人。

そんな3人を引き離すなんて、私にはできなかった。



『アルカが帰りたいって望むようになったら、私としてはいつでも帰らせてあげたいんだけどね』

「へぇ、手伝おうか?」

『…いや、私はアルカの意見を尊重する、イルミはアルカを操作する気?』

「…なんでも知ってるね」



イルミが操作系だと気付いたのはキルアに針を刺したときだけどね。

基本操作系は何かを対象に付けたり、直接触ったりして支配するのが一般的…

それ以外の方法だと何かと制約をつけねばならなくなったり、本人も色々縛られてしまう。



『イルミ、アルカに何かしたら私たちが許さない』

「私、たち?」

『チェザやヒソカの兄、フェザリーヌ…それから私のギルメンがゾルディックに総攻撃しかけるから』

「ふーん、それは困るなぁ」



困るなら困ってるっていう声色しろよ…



『ま、何もしないならこれまで通りの関係さね』

「…」

『さて、お屋敷も見えたし、私はまずゼノさんに会いに行くとするかねぇ』



考えるような仕草をしてるイルミをそのままに、私はスピードを上げて屋敷に走る。

シルバの部屋近くの窓を蹴破って中に入る。

そこにはゼノさんが待っていた。
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