シミュレーテッドリアリティ 1

□思わぬ人助け
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『暑い……』



気温38度。

湿度は知らないけど、カラッとした空気じゃないからそれなりにあるのだろう。

真夏だって日が落ちても暑いもんだ…



『アイス食べたい……』



こんな暑い日はアイスが食べたい。

そう考えたらアイスのことしか頭に残らない。


とにかく、アイス。



『はぁぁ……まだ7時前だし、補導はされないだろ……アイス買い溜めしとくか』



あとテキトーに買いもんしとくか。

外出なくて済むように。







_____

________

__________……







『どうしてこうなった』



目の前は警察。

私は事情聴取を受けている。

手にはスーパーで買ったアイスや食品その他諸々、せめてアイスだけは冷蔵庫に入れさせてほしい。



「お嬢さん、怪我はないんだよね?大丈夫?送ろうか?」

『アー、イエー、ダイジョブデスー』



何回同じ質問すんだこの能n…ゲフンゲフン、仕事だから仕方ないか。



『私もう帰って大丈夫ですか、アイス溶けるんで』

「この辺は不審者が多い、今送るから少し待っててくれ」



ダメだ、日本語が通じねぇ。

そもそも、どうして私が警察にお世話になってる…というか、事情聴取を受ける羽目になったのか。



〜回想〜



私、アイスを買いに出掛ける。

買い物を終えて帰る。

目の前を歩いていたサラリーマンの後ろをコソコソ尾けるオッサン見つける。

なんとなく欲視力発動。

オッサン、サラリーマンを心底恨んでて殺す気満々。

ヤベェって思ってたらオッサンがサラリーマンに突撃。

咄嗟に追い掛けオッサンにドロップキック、オッサン壁に激突、更に気絶(すまんと思ってる)。

オッサン刃物持ってた、サラリーマンビックリ。

サラリーマン警察に電話、オッサン捕まる、今に至る。


〜回想終了〜



こんな体験普通しないだろ。

絶対にあのクソ神が絡んでいること間違いない、今度叩きのめす。

つか、アイシキャラでもない奴と絡み設けたって、何の意味があるってんだよ。



「葉柱議員、大丈夫ですか、お怪我は…」

「大丈夫だ、問題はない」



あ、El Shaddaiだ。



「お嬢さん」

『?』

「助けていただき、本当にありがとう、なんとお礼をしたらいいか…」



深々と頭を下げるサラリーマン。


別にそんな大したことしてないし、今の私にはアイスが完全に溶けているかの方が大問題なんだが…

てかこの人、誰かに似てるような…



『いや、別に…無事で何よりです、じゃあ私はこれで…』

「あ、ちょっと君!」

「親父!!!」

『おうふ!』



ドアを開けようとしたら、ドアを壊しながら入ってきた誰か。

反射神経のおかげでギリギリでドアにぶつからないで避けれたが、ビビった。



「だ、大丈夫なのかよ!?襲われたって…」

「あ、ああ、大丈夫だ、私は怪我はしていない」

「そ、そうか…よかった…」

『あっぶねぇなぁ、心配なのはわかるけど、ドア壊しながら入ってくるなや』



はぁ、と溜め息をつく。



「お嬢さん、怪我はないか?」

『ダイジョブ……あれ、お前……』

「アン?」

『………葉柱ルイ…?』



オールバックにしてないから一瞬似てる奴かと思ったけど…



「?そうだけどよ…アンタどっかで会ったか?」

『あー…いや、私泥門高校通ってるから、君の噂とお顔はよく出回ってるぞ』



ってことにしといてくれ。



「そうかよ」

「ルイ、このお嬢さんが助けてくださったんだ」

「………マジで?見るからにひ弱そうなコイツが??」



君から見たら女の子は全員ひ弱そうに見えるだろうよ。

いや、私は弱くないんだけど。



「あ、悪ぃ、イメージ結びつかなくてよ…」

『構わないさ、今回はホントに偶然だったしな』



欲視力なかったら、この運度神経がなかったら、恐らく止められなかっただろう。

あのクソ神の思う通りに動かされていると考えるとムカつくが…



『うわ、アイス溶けてる…仕方ない、また明日買うか…』

「お嬢さん、本当にありがとう、この恩は忘れない」

『いや忘れて構わないですよ、大したことしてないですし』

「だが…」

『事を大きくする必要がないですよ、新聞には未遂で終わると思いますし、私とて騒がれるのは好きじゃない』



新聞に載るとか勘弁してくれ。



『それでも気が晴れないと仰るなら…お宅の息子さんお借りしていいですか?』

「ルイを…?」

『私、これでもアメフト部員なんですよ』



にぃと笑えば口をあんぐりしてこちらを見てくる2人。

確かに親子だな、似てる。


そして賊学と試合出来る、とヒル魔に恩を売れるだろう。

我ながらいい案だ。



『ウチと練習試合組んで下さると、とーってもありがたいのですが』

「ルイ…」

「や、別に俺はいいけどよ…」

『じゃあ決まりですね、後程連絡させていただきますね』



悪魔から♡



「……わかった、だが、本当にありがとう」

『いえいえ、それでは私は失礼します』



一礼してから署を出る。

出た時に送る云々と止められたが、家がすぐそこだと言って(無理矢理)黙らせた。


さぁて、ヒル魔に恩を売って借りを作らせるか。
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