シミュレーテッドリアリティ 1
□期末テスト
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『期末テスト?』
「うん、そろそろねー」
『…そっか、期末テスト……そりゃあるか』
なんたって今は学生だもんなぁ。
期末テストか…昔は嫌な響きだったけど、あの悪夢再来と言うより今は…ただ懐かしい。
テストのテの字も嫌いだったのに、歳をとるとこうも変わるのか。
「〇〇ちゃん、余裕そうだね…もしかしてテスト得意?」
『え?あ、やっ…別に得意って訳じゃないけど……まあ、赤点さえ回避できれば何も支障はないかと』
「〇〇ー!!お願い!!勉強教えて!!私このテスト赤点取ったら部長と顧問に怒られちゃう!!!」
ガバッと頭を下げてきたのは魅音。
どうやらスポーツは本当にかなり出来るけど頭はさほどよろしくないらしい。
「魅音ちゃんって、頭悪いわけじゃないけど、どうしても数学と英語はダメだよね…他は平均点以上なのに」
「うぐぅっ…!!!」
千裕の言葉が矢になり、魅音に突き刺さる。
「だって!数学なんて覚えたって社会で役に立つ!?」
『数学すら出来ない奴が何が出来る?って言われるぞ』
「ほぐはっ!!」
実際、言われてるの見てきたし。
私も高校の頃はなんでこんなのやらなきゃいけないんだ、社会に出て数学が出てくるのか。
そう思ってたよ、ホント、高校の頃までは。
歳をとってから、もっと勉強してれば、選択肢が増えたのになぁって。
『魅音、勉強が大事なんじゃなくて、困難に対して如何に正しい答えが導き出せるのか…それを補うのが勉強なだけなんだよ、私たち高校生は』
「困難に対して…正しい答え…」
『魅音は勉強が嫌なんじゃなくて、分らない自分が嫌なんだろう?それを勉強のせいにしてるだけさ、分かれば面白くなる、スポーツと一緒だよ』
……とか、カッコイイ台詞を言ってみたり。
でもこれは私が大人になって始めて思ったことだから、魅音たちに理解を求めてはいけない。
『魅音がやる気出すって言うなら、一緒に勉強しよう』
「!ホント!?やる!!」
『サボったら…メイド服でヒル魔にご奉仕な』
「死んでもやり遂げることをここに誓いマス…」
魅音が若干涙目になったけど…まあ、大丈夫だろう。
私服も男っぽい魅音が、メイド服なんて着たいはずがないだろうし。
…いや、逆にメイド服には憧れてたり?
どちらでも構わないけどヒル魔の前でって言うのは嫌だろう、そうだろう、私だって羞恥死するわ。
「頑張って魅音ちゃん!きっと大丈夫だよ!」
「大丈夫、大丈夫、大丈夫、大丈夫…ブツブツ…」
……大丈夫だろうか。
「ケケケケ…いい事聞いたぜ」
「げっ!ヒル魔!!」
「おい糞◎◎、目標点数決めたら教えろ、1点でも下回ったら糞委員長のメイド姿≠セかんな」
『数学と英語だけだけど、それでもいいなら』
「なぁに、構いやしねーよ、コイツの、特に数学は絶望的だかんな」
ゲラゲラ笑って席に着くヒル魔。
ヒル魔の言う絶望的って…まさか赤点…の中の赤点とか言わないよな?
『魅音、参考までに教えてくれ…』
「な、なに…?」
『前回の数学の点数』
「………(´<_` )」
悟ったような顔になった魅音。
「21点」
「なんで言っちゃうのかなぁ!?!?てかなんでヒル魔知ってんの!?」
『あ、よかった、1桁かと思った』
「よかったの!?」
1桁じゃないだけマシだよ。
「ケケケ…んで?糞委員長は目標点数はどんくらいにすんだ?」
「ぐっ……あ、赤点ギリの…35点…くらい…」
「雑魚かよ」
「赤点さえ取らなきゃいいのさ!」
『60点にしとくか』
そう言えばヒル魔はニタァと笑い、魅音は絶望のドン底に落とされたような顔をした。
千裕は苦笑い。
「ちょ、ちょっと〇〇…それキツくない?キツくない!?」
『魅音のやる気を上げるために背水の陣で挑もうかと…』
「もう充分上がってるから!!」
『退路を断ってこそ人間はその真価を発揮するものさ』
「鬼畜がいた!!!」
ズーンと地に手と膝をつく魅音。
でもこうでもしないと逃げるだろうしなぁ。
『大丈夫、ちゃんとご褒美も用意する』
「ホント!?」
『甘いもの好きな魅音に朗報、目標点数に届けばヒ〇トン東京のマーブ〇ラウ〇ジにご招待』
「いいの!?マジで!?あそこ4000円近くするスウィーツブッフェだよ!?」
『みんなで行こ、でも魅音が合格点行かなかったら連れてくだけ連れてってお預けだから…ネ☆』
ニッコリと笑えば魅音の顔が限界まで引き攣った。
後に、凄く怖かったと言われたが…そんな怖くした覚えないのになぁと。