シミュレーテッドリアリティ 1
□リアル逃走中
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なんでこんなことになっているのだろう。
現在私、●●〇〇は東京某所を全力疾走中である。
理由は…まあ、追いかけられてるからなんだが…
かれこれ1時間は走ってるんじゃないだろうか。
『はっ…はっ…』
キィン…と欲視力を使って私を追いかけている奴≠フ視界を覗き見る。
「見っけ☆」
『!!』
真後ろ…!!
気付いた時には遅く、ガシッと手首を捕まれ、振り向かされる。
「やっと捕まえた」
『…それはそれはおめでとうございます……ついでに離せ…!!』
「あー?」
ギリ…ッ
振り解こうとしても流石に力を強めたコイツに適うとは思えず、早々に諦めた。
『………私に何の用なんだよ…金剛阿含…』
「あ、俺のこと知ってんだ?」
『お前のお兄さんとは友達だよ』
「雲子ちゃんと?」
……雲子ちゃん…リアルに聞くとコイツ何言ってんだ感半端ないな。
「珍しいな、あの堅物が女と友達だなんてよ」
『……痛い』
「悪ぃ悪ぃ、でも離したらまたどっか行っちまうだろ?」
そりゃ…全力で逃げるわ。
でもこの辺の地理全然頭に入ってないからまた捕まりそうだけど。
てか私はなんでコイツに追いかけられたんだっけ?
ふらっと街を歩いてただけだったのに、いつの間にか目の前にはニコニコと作った笑みを浮かべる金剛阿含が。
もちろん、気付いた時には全力で逃げた。
しかし、地の利は向こうにあり、私は捕まって現在に至る。
「お前には聞きたいことがあったんだ」
『へぇ』
「前にお前見かけてよォ、話しかけようと思ったんだが…瞬きした一瞬で消えたから気になってたんだよな」
『………この間の……土曜日か…』
「…なんで知ってやがる、こっちを見なかったろうが」
それはお前と目を合わせると逃げきれないと思ったからだよ。
なーんて口が裂けても言えねぇな。
欲視力のおかげですって言っても、信じらんないだろうしなぁ…
話は早い方が好ましいと思って土曜日ってワード出したけど、いらなかったか。
『嫌な雰囲気を感じたから、たまたま前を通った人間の影に隠れて同じように動いて逃げた』
「へぇ、その動きを初めてやるには上手すぎる、お前何者だ?」
…コイツの私への興味がナンパ¢ホ象じゃなくて、人間として興味¢ホ象に変わったらしい。
人の視界を盗み見るとはこんなにも気持ち悪いものなのか。
『……ただの女子高生』
「無理だな、女にゃそんな動きは出来ねぇ」
『私が女ではないと?』
「ちげぇよ、初見の人間の影武者のように動ける奴が、ただの女な訳ねーだろ」
じゃあなんて答えればいいんだよ。
「才能っちゃ才能だな、だがそれだけじゃねぇ…動きに無駄がねぇ、だが違和感がある…得体が知れねぇ人間なんざ初めて見た」
『……その推理力を世の為人の為に使おうとは思わないのか』
「思わねぇな」
『ホント…雲水とは真逆だな…』
「あんな生真面目と一緒にすんな」
これは自身が雲水と一緒にされて言ってるのか、それとも雲水を自身と一緒にされて言ってるのか。
どちらと言えば…後者っぽい感じはするねぇ。
「テメェ、何者だ?」
『何者でもない』
「名前は」
『…キタサンブラック…』
「誰が競馬馬の名前言えっつった」
え、キタサンブラック知ってるんだ…
てか、この場所でも競馬馬として活躍してんのか。
…ん?キタサンブラックが競馬馬になったのっていつだっけ??
『…●●〇〇…』
「〇〇か、んで?お前は一体何なんだ?どうなってやがる」
『……実は昔、名を馳せた忍びn』
「わかりやすい嘘ついてんじゃねーよ」
『お前から逃げるのに必死だったんだよ、わかれ』
敵意を見せれば鋭くなる眼光。
ヤバい、めっちゃ怖いんですけど、助けて雲水。
「………おもしれぇ女」
『は、あ?』
「ブスにゃ興味はねぇが…顔はまあ合格点出してやってもいい」
なんという上から目線。
ほんとに顔さえ良ければなんでもいいのかよコイツ…
女の敵じゃ…!
「ケータイ出せ」
『は?』
「早くしろ」
『……断ったら…』
「殺すぞ」
拒否権はミクロンもないそうです。
少し戸惑ったけど、大人しくケータイを渡す。
阿含は勝手にメアドを交換してケータイを投げ寄越し、そのまま回れ右。
「そのうち電話すっから出ろよ」
『……拒否権は…』
「ある訳ねーだろ」
それだけ言って去って行く嵐、元いい金剛阿含。
『………はぁ…』
ホント、心臓に悪い…
それもこれも全部いらん縁を結びやがったあのクソ神のせいだ…!!
『次…次目の前に現れたら全力で殴り飛ばす…』
私はそう心に誓った。