小説

□驟雨
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昼休み、学食に着く前にうじはらが僕に追いついて肩に腕を回して来たから、そのまま歩いた。背がだいぶ違うから肩に腕を乗せやすいのだと、前に言っていた。重みが気持ちいい。一人じゃないのだと感じて。
二人でテーブルに付き、唐揚げ定食を食べ始めると、顔見知りがやって来た。
「一緒に食べてええ?」
うじはらが来る前はたまに一緒になると、隣で食べて喋っていた奴だった。
「うじはらって、どうやって勉強してるん?国語で満点って考えられへん。」
聞かれてうじはらは口ごもった。元々人見知りのところがある。
「ん〜、答えだけ読んでも問題文が伝わるように…」
「へー!初めて聞いた!やっぱすげーな!あ、うじはらって高跳びも凄ない?この間見ててんけど文武両道やん!」
そいつがうじはらと親しくなりたがっているのが一目瞭然で、自慢したい気持ちと割り込まれた気持ちが葛藤してイライラした。
「うじはら何でも上手いよな!この間のあれ!バスケの試合でディフェンス3人振り切ってなぁ!」
「ああ!それな!でもすがが俺のパス取れなくて…」
「あれはパスが高いわ!」
「おまえの背が低すぎやねん!」
「俺に合わせんかい!」
「こぼれ球を拾われたけど、俺がまたカットしてシュートに繋げたやん」
「あれは凄かったなぁ〜!さすが俺の親友やわ!って思った!」
僕はなんとか会話を自分と二人だけのものに変え、口を挟ませなかった。顔見知りの方を一切見ず、会話のパス回しはこぼさなかった。
うじはらが背にしている窓ガラスに水滴が付き始めた。
「あ、雨降ってきたんちゃう?傘あったかなぁ?うじはら持ってる?」
「あるで。」
「良かった!」
「入れてもらう気満々やん!なら、部活来いよ?すぐサボるからな」
「最近全然サボってへんって!」
実際、うじはらのプレイを見るつもりで参加していた。自分はあまりセンスもないし、努力は嫌いだった。
「すがの思い切りの良さは貴重やと思うわ。ちゃんと練習したらうまなるって」
「オウンゴールするけどな!」
笑い合っても視線を外さない。
顔見知りは諦めたように黙々と食事をし、黙って立ち去った。視界に捉えていたけれど、僕は会釈さえせず、いつもより少し大きめの声でうじはらと喋り、笑わせた。
独占欲を親友に持つなんてガキだと自分でも思う。でも僕は親友初心者だから、小学生並みでも許されるはず。
そう胸の中で言い訳をしていた。
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