小説

□誰もいない日々
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関西に帰れるのよ!

家族のテンションは今までの転勤とは違った。
前からふるさとは関西だと聞かされて育っていたし、親戚もいる。
もう最後の引越しなの?

それはわからない。
まぁ、いろいろあるからね。

僕はラッキーだとたくさん言われて、国立付属中学に転入した。
いつもの転校と変わらないと思っていた。

でも、新しい中学校はみんな眼鏡をかけていて、関西弁だった。東での暮らしが長い僕にはノリの違いに違和感があった。
付属だから、小学校から進級してきている連中はもうがっちり固まっているし、中学受験して入って来ている生徒は、塾つながりでもう友達を作っていて、クソ真面目だった。自分の立ち位置探しで忙しく、僕にかまっている暇はない。
中途半端な転入生は居場所がなかった。

しかも、勉強がクソ難しかった。
長野のグループ学習なら目立てたけれど、個人力では太刀打ち出来ない学力差だった。聞けば夜中まで勉強して受験しても、受からない程の学校だったのだ。
試験勉強さえしたことがなかったのに上位にいたのんきな僕に、馴染めるわけもなかった。太刀打ち出来ないなら勝負はしない。

また転校するかもしれないし、積極的に友達を作る必要は無いや。
時々笑えるクラスメイトがいればいい。クラス替えで分かれたら、もう廊下ですれ違って、元気?次テスト?寝みぃ!と言うくらい。

そう思って中学時代が過ぎた。
辛くはなかったけれど、盛り上がりもしなかった。

幼なじみがいる人が羨ましかった。
僕の過去は消しゴムで消えてしまったようだった。
ゲームで一緒に戦ってきた仲間が、ワールドが変わったら、町に残るときの残念感に似ている。
せっかくレベル上げしたのに!
一緒に戦ってくれる仲間がほしいよ!
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