小説

□誰もいない日々
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転勤族の子供には選択肢はない。

親が2週間後にはみんなとお別れだよ。と、ある日突然言えば、僕の世界は一変してしまう。

退屈な病院を出られて、幼稚園で毎日会える友達もできて、毎日お別れを言わない家族と暮らせて、もうずっとこのままだと思っていたのに。

家族と別れるよりはマシ。
でも、号泣した。
大好きになった友達と、もう毎日遊べない。

また会えるよ。遊びに来てね。遊びに行くよ。さよなら、さよなら。おぼえていてね!忘れないよ!元気でね!

ウソなのは、知っていた。
看護師さんたちもそう言っていた。
遊びに来てくれることなんてない。
子供がひとりで来られるわけもない。
二度と会えない。
世界が終わってしまう。
見悶えて泣いても、失う世界。
別れが僕に積み重なる。


転入は辛くはない。
ちょっと目立つし、新しい友達もすぐできる。短い期間しかいないなら、引っ込み思案でいる暇はない。すぐに懐に入り込む。力関係を見抜く。摩擦は起こさない。
好感度上げは特技になった。

でも、前の友達は僕のことを忘れたろうな、、と、思うと寂しかった。
新しい友達との日々が、すぐにかけがいのない楽しさに変わるけれど。

ある日突然、しょうがないでしょ、、と、当たり前のことを言うように、別れがくることを告げられ、従うしかないことが繰り返されると、号泣するのもくたびれる。

もう泣きたくないな。
友達いなければ、泣かなくてすむな。

僕の瞳が、真っ黒になった。

新しい学校で、ちょっと転校生として目立ってチヤホヤされて、クラスメイトに好かれても、まるでそこにいないかのような気分でいた。

僕はすぐにどこかに行ってしまうよ、君達は知らないだろうけどね。

でも、いいんだ。
もう泣きたくないし。
君達はどうせ僕を忘れる。
忘れてしまう僕と仲良くなっても無駄だもの。
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