【短編】

□貴方に花束を_
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貴方にこの花束を__







警戒区域という所に聳え立つボーダー本部。


そう、久しぶりに三門市へ来た。単純に三門市がどうなっているのか知りたかったから。
元々三門市に住んでいたが4年前の第一次侵攻により家が破壊され、ここにいては危ないという事で県外へと引っ越したのだ。

本当は私だけでも三門市に残りたかった。当時の私には付き合って人がいたからだ。でも、4年前…つまり私は受験を控えた中学3年生。家族は残ることを反対した。私の気持ちも分かるが親として我が子1人をいつ何がある場所なんかに住ますわけにはいかないと思ったのだろう。

結局、私は折れて家族と共に三門市を去った。何も言わず、付き合っていた人の家の前に花束を置いて。


「街、綺麗になってるなあ」


道路は整備され、通りにはカフェ等のお店が並び、多くの人々が行き交う。
第一次侵攻の時が嘘みたいだ。
やはり、市民が【ボーダー】を信頼しているからだろうか。きっとそうだろう。そうでなければこんなに人で溢れていない。

不審に思われるかもしれないけど周りをキョロキョロと見回したり、綺麗なアクセサリーを見つけて買おうと思って値段の高さに落ち込んだりと街を探索していた時、ある話が耳に入った。


「ねえ!今、ボーダーの人が来てるって!」
「そうなの!?見に行こうよ!」
「うん!」


何気なく耳をかたむけていたけど、ボーダーの人に興味が湧いた。これはボーダーの人に会えるチャンスだ。そう思った私は彼女たちが行ったであろう方向へ走っていった。


◆◆


着いた時にはステージを囲んで人が多く集まっていて中々ボーダーの人が見れなかった。なんとかして見ようと思い、ステージの横側へ移動し丁度空いていた所へ入った。運動が出来ない割りに素早い動きだったと思う。
そこからステージを見てみると赤い服…隊服をきた5人のボーダーの人がいた。顔はよく見えないけど、こういうものに出る人たちは顔が整っているのだろう。

司会者が5人の事を1人ずつ紹介していく。綾辻遥ちゃん、木虎藍ちゃん、時枝充君、佐鳥賢君…そして今、隊長さんの紹介だ。


「さあ!皆さんご存じかと思いますが嵐山隊隊長 嵐山准さんです!!」

「…嵐山、准」


自分の耳を疑った。
同姓同名の人だろうと思ったけど、司会者が読み上げるプロフィールが付き合っていた人のものと全て一致していた。
まさか付き合っていた人…准君がボーダーの人だったなんて…知らなかった。いや、自分が知ろうとしなかっただけだ。
私は引っ越すと共に携帯をかえ、メアドもかえたのだ。彼との繋がりを絶ちきるかのように。

それからというもの、ただ私はボーッとしていた。准君が驚いた顔をしたのも知らずに。


◆◆


イベントが終了すると徐々に意識がはっきりとし、自分が置かれている状況を見た。凄い人が集まっていたのに今はほとんどいない。


「帰ろう」


ゆっくりと歩き出し、あるところへと向かった。ここから近いため直ぐに【花屋】へついた。


「いらっしゃいませー」
「シオンとスイートピーで花束をお願いします」


「わかりました」と店員さんは言うとテキパキと動き、花を包んでリボンを結んだ。


「お待たせしました」
「ありがとうございます」


代金をお釣りなく支払い、彼の家へと向かう。もし前と変わっていなければあるはずだ。

私の予想は当たり、表札には【嵐山】と書いてあった。4年前に置いた場所と同じ所に花束を置く。名残惜しそうに踏み止まってしまいそうになるけれど「4年ぶりに顔を見れた」「十分だ」と自分に言い聞かせその場を去った。







シオン…追憶
スイートピー…さようなら








なんか色々と雑になったような…
しかも、嵐山さん全然出てないや。嵐山さん視点のものを書こうかな!余裕があればですけど…

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