雪と夢と罪の歌

□9 保育係
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そこで武が何かに気づいたようで、地面から白いものを拾いあげていた。横から覗き混んでみれば、そこには角らしきものが。

「おいおまえ、角落としてるぞ。」

「あ…投げてください…」

「あいよ!」

声をかけるなんて、やはり武も優しいねぇ。なんて感心しているところで放たれた豪速球。
さすが1年から野球部のレギュラーなだけある…って違う違う!なんでそんなに豪速球なんだい!?やさしく投げればいいじゃないか!
リボーンが私の肩の上でキラーン!と目を輝かせているのが見ずともわかる。
そうしてグサッと刺さる角。倒れるボヴィーノの小僧。

「わっ!わりぃ!!」

「!!ランボ!!」

『確実に刺さった…!』

駆け寄ってみれば、額から血を流しながらまたもや「が…ま…」と呟いている小僧。あー…この流れってリボーンから聞いてた大泣きの、

「うわあああああ!」

「結局こうなるのか…」

パターン、だよねぇ。10年後もあまり進歩ないのかな。

「やっぱ名前以外ならツナが面倒みるしかねーな。」

「おまえ、最初からそのつもりだっただろー!!てか名前ちゃんは候補じゃないのかよー!」

後ろで肩から降りたリボーンと綱吉が話しているのが聞こえるが、そっちはあとでとりあえずボヴィーノの小僧だな。

『ほら泣くな、ボヴィーノの小僧。』

「ぐすっ、名前さん…本当にお会いしたかった…えぐっ、10年後貴女に会うのはとても難しいので…」

「「「「!?」」」」

『…会うのが、難しい?どういうことだい?』

まさかセントラルの仕事に追われて、とか?そうなると10年後の裏社会は、かなり犯罪が増えていることになるのだけれど。

「…10年後、貴女の地位がさらに確定された、というのも理由の一つですが…ぐすっ、一番は…」

『…一番は?』


未だぐすぐすと涙を流しているボヴィーノの小僧は、その理由を言おうか言うまいか悩んでいるようだ。未来に関わることだから、きっとあまり話してはいけないのだろう。
それでももう一度口を開いたボヴィーノの小僧は、私達の予想の遥か上の解答をしてみせた。

「…10年後の雲雀氏が、貴女を独占して会わせてくれないんです…っ!」

『…え?』

「「「「はぁっ!?」」」」

「ふっ」

「会いに行く度に雲雀氏が…「名前は僕と過ごすから帰りなよ。邪魔したら…」というので会えないんです!最近では月二回の会議くらいでしか会えません…!」

うわあああああ!と更に泣き出したボヴィーノの小僧。固まる私達。…私が動けない理由はただ一つだけれど。

『じゃあ私は10年後もみんなと、恭弥と共にいられるんだね…?』

「あ…」

「はい…オレ達が生きる未来では、お二人とも酷く幸せそうです。」

『…そう。』

よかった、と目頭が熱くなっていく。

私は愛する友と、恋人と共に…生きていられてるんだね。

「しかし貴女達の歩む未来とは不確定なもの。どうかここで生きるオレ達、特に雲雀氏と共に生きることを諦めないでください…貴女の幸せのためにも。」

『わかった。…ありがとう、ボヴィーノの小僧。』

「いいえ、親愛なる名前さんのためですから。…それと、どうかオレのことは『ランボ』と呼んでください。」

『ふふ…ああ、ランボ。』

最後に満足気に微笑んだランボは、次の瞬間煙に包まれてしまう。…ということは帰ってくるのかな、こちらのランボが。

「あららのらー?ランボさん食べたりないんだもんねー!」

『おかえり、小さなランボ。』

「んー?おまえだれだー?」

ランボさんおまえ知らないぞー!と叫んでいるランボと、それを咎める綱吉。ハルちゃんはまだ大人ランボの色気にやられているらしく微妙に上の空だ。

『名字名前だよ。好きに呼びなさい。』

「名前ー?聞いたことあるぞー!…なんだっけ?」

「「覚えてないのかよ!!」」

聞いていたよりずっと可愛い子だなぁ、なんて微笑ましく見守る。にしても綱吉と隼人は息ぴったりだね。

そんなところに感心していると、突如鳴り響くマリオのテーマソング。…恭弥だ。

『ごめんよ、出るね。』

「う、ううん!どーぞ!」

『…もしもし、どうかした?』

「《…遅い。》」

『うーん?応接室を出てから10分もたっていないのだけど…』

「「「「(ヒバリ(さん)だー!)」」」」

みんなが心の中で思っていることなど欠片もしらず、会話は続いていく。

「《仕方ないじゃないか、名前に会いたくてじっとしてられないんだ。…ねぇ名前、早く帰ってきて、》」

『!もう…しょうがないなぁ。今戻るから待ってて。』

「《うん、待ってる。寄り道しちゃだめだからね。》」

『ふふ、わかってるよ。じゃあ切るからね。』

肯定の返事が返ってきたことを確認すると通話を切り、ランボを宥めている綱吉に向き合った。

『綱吉、風紀委員長が私を呼んでいるんだ。悪いけど抜けさせてもらうよ。』

「わ、わかった!」

『じゃあね。…そうだ、ランボ、ほら。』

ぽいっと包まれた飴を放り投げる。確かブドウ味。
喜んでいる声を背中で受け止めながら、愛しの恭弥が待つ応接室へ早足で歩き出した。


9 保育係 END

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