短キ物語U
□【ギアス】夢のその後―…
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ゼロレクイエムから1年が経った―
魔王と歴史にその名を刻んだルルーシュ・ヴィ・ブリタニアの死から1年―
街ではその記念祭が開かれている中、一部の人たちだけで名も無き墓標に花を供えていた。
「ルルーシュ…もう1年だよ…ナナリーも色々と頑張ってるよ。僕は…なんでだろう…1年前には君を討つ事しか考えて無かった…だけど、今になって他に道が無かったのかと……もう、終わったこと、なのに……ごめん」
黒の仮面を外し、その墓標に語り掛ける。が、この墓標の下にその人はいない。
わかっているのに…と呟き、再び黒の仮面をつける。
「あはーなーにしてるのかなぁ〜?」
「……」
仮面をつけたばかりでまさかここに人がいるとは思っていなかった。
それも、この人がここに来るはずがないと勝手に決めつけていたために油断していた。
「まさか、話せない〜って言わないよねぇー?」
「……何で、ここにいるんですか……ロイドさん」
ロイド・アスプルンド
旧特派の主任研究員。
ナイトメアの研究は戦争をしない世界では不必要と言う判断で特派は解体され、それと同時に消えた人だった。
「んんー、ちょーっと君と話しがしたかったんだよ〜枢木スザク」
「っ!?」
急に背筋が凍る様な感覚が襲った。
まさか、この人にそんな事が出来る訳ないと思っていた傲りだった。
「ねぇ、キミはこの世界が本当に優しい世界だと思う?」
「えっ…」
唐突に聞かれた事は意表を突かれた。
あの事件から1年、まだまだやることが多いが今までに比べれば戦争や争いのない十分に平和な世界になったと思っていた。
「この世界は本当にあの人の望んだ優しい世界なの?」
言葉を返せなかった…。
今までと比べればの段階…まだ、争いは残っている。
ナナリーの政治手腕は全くと言っていい程無かった。それでも寝る間を惜しんで勉強しながら頑張っている。
そのナナリーの目指す世界が彼の望んでいた優しい世界だとナナリー自身も信じているから。
「違うね。あの人の望んだ世界はこんな世界じゃない。この世界は偽物だよ…」
「そんなことはないっ!ナナリーだって一生懸命に頑張っているんだ!」
「そう、頑張っているだけ。それだけじゃダメなんだなぁ〜もう、彼女は忘れている」
「えっ?」
忘れてる?何を?
「ま、僕にはもう関係ないけどぉ〜」
あははっと笑いながら去ろうとするロイドさんを追い掛けようとしたが、その先にはロイドさんはいなかった。
と思ったら自分の右腕は後ろに取られていた。
「っ!?」
「僕には仕える主がいる。その人がもう駄目だと言っている。主は優しいからね、君にだけ子の事を伝えるよう言われたから来ただけ。あの子に伝えるかどうかは君次第」
ロイドさんに主?
もう、何が何だか分からなくなっていた。
「じゃあね、ランスロットも主への手土産に貰ってくねぇ〜」
そう言ってロイドさんは今度こそ消えていった。
「ナナリーが忘れてる?一体、何を…」
その独り言は、その時を同じくして打ち上がった花火によって消えてしまった。
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