短編

□本当の事
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放課後。
部活が始まってかなり経つが、中々来ない仁王を探しに来た柳生。
仁王の教室、つまり3−B組の教室を覗く。
すると、ポツンと一人椅子に座り外を眺めている仁王の姿があった。



「仁王君?」
「……おー、柳生」
「何してるんです?部活とっくに始まってますよ?」
「…うん、知っとるよ」
「なら何で来ないんですか…」



外に向いていた仁王の視線が柳生の方を向く。
そして小さく、「行きたくないから」と言った。


「え…?」
「俺探しに来てくれたんじゃろ?ありがとさん」
「ちょ、仁王君」
「今日は体調悪い言うとって」



鞄を持ち、教室を出ようとする仁王を柳生が阻止した。
視線が合う。どけ、と仁王の目が言っている。



「どうして来たくないんですか」
「柳生には関係無い」
「あります!同じテニス部員でしょ?」
「だから何じゃ。俺がどうしようと勝手じゃろ?」
「勝手な事は許しません、来たくない理由を言って下さい」
「煩い」
「仁王く・・・・・っ」


急に壁に押しつけられて唇を奪われる。
重ねられた唇から舌が侵入してきた。


「っ、・・・!」


パンッと教室全体に響いた音。
仁王は何も言わず柳生に叩かれた頬を触る。


「最低です仁王君・・・!」
「・・・・・・・」
「どうして、どうして言ってくれないんですか」


仁王は何も言わずに教室を出て行く。
柳生はもう一度仁王の名前を呼んだが、仁王は振り返らず廊下を歩いて行った。







ごめんの、柳生・・・・・。

ホンマは部活行きたいし、凄く柳生に関係ある。

だけど、

お前は俺の本当の気持ちを知ったら軽蔑するじゃろ?

だから、これ以上俺の中に入り込まんで。俺の前から消えて。



・・・・・好きぜよ、柳生。





無理矢理奪った唇は、悲しくもまだ感触が残ってる。




本当の事

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