短編

□体温上昇
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誰かの気配を感じて目を覚ました。
薄っすらぼやけた視界。
誰も居るはずが無いのに、声がした。


「仁王君」


聞きなれた声。


「熱は下がりましたか?」

「・・・・・・・・・・・・柳生!?」


勢い良く身体を起こしたせいで、クラッとした。
朝から八度の熱があった為学校を休んだ仁王。


「何で居るんじゃ・・・」
「幸村君に頼まれましてね。様子を見てきてくれ・・・って」


いつも通りの笑顔を向ける柳生。


「食欲は?」
「無い。」
「ちゃんと薬は飲みましたか?」
「あー、飲んでない」
「駄目ですよ、ちゃんと薬を飲まないと・・・」
「へーへー」


熱のせいか喋るのもだるい。
ぼけーと柳生の方を見てると、柳生は「水と薬持ってきますね」と言った。


「・・・・・・・・・・やぎゅー」
「何です?」
「薬はええから・・・」
「駄目です。」


キッパリ柳生は言うと、水と薬を持ってきた。
仁王の目の前に水の入ったコップを差し出し、薬を一粒取り出した。


「はい」
「何じゃー、飲ましてくれんと?」
「当たり前です。アナタ幾つです?」


呆れた顔で柳生は仁王を見る。
仁王はちえっと舌打ちをした。そして薬を口の中に入れ、水で押し流した。


「薬飲んで寝て、早く治して下さいね」
「ん、」
「皆心配してますから・・・。」
「柳生も?」
「勿論です」


そう言って柳生が微笑むから、俺も笑った。


「・・・・・・・・それでは」
「なん?帰るん?」
「えぇ・・。居てもしょうがないですから」
「えー」
「“えー”じゃありません」


また呆れた顔。


「じゃー・・・・・」
「?」
「チューして」
「はっ?」


ゆっくり、柳生を自分の方へ引き寄せる。
仁王の手が柳生の頬に触れる。


「…仁王君の手、熱いです」
「熱あるきぃ。」
「移さないで下さいね?」
「や、それは無理じゃろ。」
「何キッパリ言ってるんですか。」


仁王は「大丈夫、そん時は俺が看病しちゃる」と言った。
そしてチュ、と軽くキスをすると柳生を押し倒した。


「ちょっ、何するんですか‥。」
「柳生知っとる?熱ん時は汗掻くんが良いんよ」


ニッと笑って言う仁王に柳生は溜息を一つ吐いた。





体温上昇

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