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□toi et moi
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穏やかな時間が流れてゆく。


今が戦争中だなんて信じられない程の静けさ。


清んだ空気が漂う書庫。

昼間でも薄暗いその場所に僕はいた。


静かに読書をしているラビの隣で、明るい窓の外に目を向けている。
暗い部屋から見る外光は眩しいくらい。

なんて心地よいんだろう。

まだ教団の中は外の世界と違って平和なんだと思いたかった。

此処だって広大な世界の中の一つということに変わりはないけれど。




ソファーにもたれて微睡みかけていた頃、静かに読書をしていたラビが呟くように言った。



「アレンは光みたいさ…」


「…え?」


そのまま本に視線を落としたまま小さく呟く。


「眩しくて俺には届かない。いつか、目の前から消えてしまいそうさ……」


今まで見たことのない何処か寂しそうな顔。
いつもの彼らしからぬ表情に戸惑った。


「……なーんてなっ」


顔を上げてにこりと微笑んだラビ。
一瞬その笑顔にドキリとした。




何を言ってるんですか

僕はここにいますよ


ほら、こんなにも近くにいる

触れることもできる


声だって届くのに…




「…それは、僕の台詞です。あなたこそ突然いなくなりそうで本当は凄く…不安なんです」


君は僕らとは違う。
同じでいたいと願うけれどそれは叶わない。
ブックマンとしての責任を背負っているから、いつか彼が教団から出て行かなければならない日が来ることくらい知っている。
それはどうしたって避けられないこと。
でも僕は言わずにはいられなかった。



「ラビ…何処にも行かないでください。僕の前から消えないで。ずっとずっと、僕の隣にいてください!」


無理だとわかっていたけれど、どうしてもこの気持ちを解ってほしかった。

いつの間にかラビと共にいることが当たり前になっていて、同時に離れることが怖くなっていた。

戦場で血を浴びて戦うエクソシストだって、所詮はちっぽけな人間でしかない。
何かを失うことに、こんなにも怯えている。

だからこそ僕らは戦うのかもしれない。


「お願いです…これからも僕と一緒に、いてください…っ」


無意識のうちに透明の雫が目から零れて頬を伝っていた。
それを見たラビは少し驚いていたけれど、近くに来て優しく抱きしめてくれた。
その温もりに触れて次々と涙が溢れだす。

こんなにも彼に依存していたなんて知らなかった。


「お願い、何処にも行かないで…」


それに答えられないのは知っていた。
この我が儘がどれだけ彼を困らせるかもわかっていた。
けれどラビは何も言わずに優しく髪を撫でてくれた。
答えられない返事の代わりに…。



「アレン。物語を一つ、聞かせてやるさ」


「物語…ですか?」



「そう。ハッピーエンドで終わる物語を…」







ある所に白い髪の子供と朱い髪の子供がいました

二人はとても仲良しで、何があっても一緒にいました

戦争が続く真っ暗な世界で彼らは生きていましたが、どんなことがあっても希望を捨てませんでした

二人は共に戦って闘って戦い続けて、ついに世界を光に導きました

世界を支配していた闇が姿を消し、光に満ちた世界に生まれか変わった後も、二人の仲は決して変わりませんでした

そしてお互い誓い合ったのです

"これからもずっと一緒に笑って生きよう"







「ふふ…本当にハッピーエンドですね」


これがラビの願う未来なんだ。
その物語がどこか単純すぎて、だけどやっぱり自分と同じ気持ちなんだと思うと可笑しくて少し笑ってしまった。


「本当にこんなハッピーエンドに…なってほしいですね」


「あぁ…なるさ、絶対」


そう言うとラビはもう一度力強く抱きしめてくれた。

でもやっぱりこの温もりに触れられなくなると思うとどう仕様もなく悲しくて、また涙が溢れた。



神様どうか


もう少しだけ僕らに




時間をください…









end

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