小説2

□絶体絶命
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大学の授業終わり、講義室を出ようとした瞬間に亜佑美ちゃんに肩を掴まれた。




「一生のお願い!合コン付き合って!人数合わせだから座ってるだけでいいから!ね?ね?お願い!」




最初は断ったものの、亜佑美ちゃんの押しに負けて来てしまった訳だけど。



居酒屋独特の匂いとガヤガヤとした雰囲気に聖は戸惑うばかりだ。




ソワソワと落ち着かない聖に「そんなに緊張感しなくて大丈夫だよ」と笑う亜佑美ちゃん。




しばらくすると数人の男の人がゾロゾロと向かいに座った。



こんな所えりぽんに見られたら一貫の終わりだ。


「じゃあ自己紹介から!」




その言葉と同時に始まる自己紹介。


やっぱり集中できなくて適当にやり過ごした。




みんなお酒が入っているせいか凄く盛り上がっている。


同じ空間に居るのにまるで遠い所に居るみたいだ。


今更ながらここに来た事を後悔した。


早く帰りたいな。




端の席でちまちまとお酒を飲みながらそんな事ばかり考えていた。




「聖ちゃん、だっけ?一緒に飲もうよ」


その声に驚いて視線を上げるとそこには体育会系の爽やかな男の人が。


そして聖の隣にドサッと座った。



顔も世間一般で言うイケメンの類で、いかにも女の子にモテそうなタイプ。




「聖ちゃん彼氏居るの?って居たらここ来ないか」


あははと笑う彼。


いやいや居るんですけど!


笑えないよ…




それからしつこく話し掛けてくる彼を軽くあしらいながらひたすらお酒を胃に流し込んだ。



えりぽんに会いたいな…



そう思う度にひどい罪悪感に襲われて、またグラスに手を伸ばした。





どのくらい飲んだか分からない。


気づけば立ち上がれないほど酔っていて、意識を手放してしまった。






「俺が送ってくよ。あ、うん。じゃあまた」



彼のそんな声と遠のくみんなの声が聞こえたと同時にようやく意識を取り戻した。




「…ん、あれ、みんなは?」


「もうお開きになったよ」


「…そう。………!?!?」





外の冷たい風に当たってようやく状況を理解した私は慌てて彼から離れた。




恋人が居るのに他の人の肩を借りてたなんて本当に笑えない。



合コンなんて来るんじゃなかった。



「いいよ遠慮しなくて」



そう言ってまた彼が近づいてきた時

♪〜♪〜♪




タイミング良く鳴った電話。



画面に表示されるえりぽんの名前。




出ようか出まいか悩んでいると、電話は切れてしまった。



心配してるだろうな…



そう思ってまた画面に視線を戻すとえりぽんからの着信が15件も入っていた事に気がつく。




どうしよう、そう思っているとまた電話が鳴った。




「出なくていいよ」




そう言われていきなり腕を掴まれた。



酔っているせいもあって状況が上手く飲み込めない。



「2人で飲み直そ?」




電話が一旦切れてまた鳴り始める。




何してるんだ聖は。


早く出ないと。




「ごめんなさいっ」



そう言って手を振り払って駆け出した。


お酒のせいで上手く走れない。




少し走って彼が見えなくなった事を確認して電話に出た。




「……もしもし」

『聖!?!?やっと出た。今どこ!?どれだけ心配したと思ってると!?』

「ごめんなさい」




大好きなえりぽんの声に安心して思わず泣きそうになる。



「ふぇっ…えりぽっ…」

『ちょ、何泣いとるん』

「会いた「聖ちゃん!」」





最悪だ。



本当に最悪だ。




「走ってっちゃうからびっくりしたよ」


『聖、誰といると?』


明らかに低いえりぽんの声。




「えりぽん!違うの!!!」

『もう知らん』



電話を一方的に切られてしまった。




誤解とかなくちゃ。



その一心でひたすら走った。




足が縺れて何回か転んだけど足から出る血なんて今は気にしてる余裕なんてない。



何より早くえりぽんに会いたかった。




やっとの思いで辿り着いたえりぽんの家。



インターホンを何度押しても応答はない。



「お願い、開けて…」


振り絞るように言ったと同時にドアが少しだけ開いて、えりぽんの顔が見えたとたん腕を掴まれて中へ引き込まれた。




「さっきの誰?」



そう言われて壁に押し付けられた。


いつもと全く違う獣のようなギラギラしたえりぽんの目に怯んで何も言えない。



「ふぅん、言えないような仲なんだ」


違う。


違うのに…




「何で泣くと?泣きたいのはこっちっちゃん」



更に強く壁に押し付けられて噛み付くようなキスをされた。




強く掴まれている手首と壁に押し付けられている背中がヒシヒシと痛む。





ちゃんと理由を話して誤解を解きたいのに泣きすぎて上手く話せない。




「ごっ…め…なさ、…」




聖があまりにも泣くからか、えりぽんはハッと我に返ったかのように強く掴んでいた手首を離した。



へなへなと座り込む聖に合わせるように座り込むえりぽん。





「ごめん、やり過ぎた。落ち着いたらちゃんと話し聞くけん」



そう言って聖を抱き締め、背中をさすってくれた。


こんなに優しい人を裏切った自分に腹が立つ。



伝わるえりぽんの熱が痛い程温かかった。





ようやく嗚咽が収まり、全てをえりぽんに話した。




「そいつ殺す」と言ってえりぽんが家を出ようとした時はさすがにひやひやしたけど。




「どこ触られた?」

「うーん、手」

「だけ?」

「多分」




「消毒」そう言って手に何度もキスされた。


くすぐったくて身をよじると、


「やっぱりここがいい」



唇に優しいキスをくれた。







「えりぽん」

「ん?」

「大好き」

「あーもう、反則」

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