小説

□言葉にすれば 譜×生
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時刻は午前2時









隣には大好きな人の寝顔




「…可愛い」





寝顔だけは可愛いんだから







心の中でそう言って頬を撫でる









えりぽんはたまに何を考えてるのか分からなくて、ちょっぴり不安になる





今日だって会うのは1ヶ月ぶりだった







聖は勇気なくて自分から連絡ができないからいつもえりぽんの連絡待ち








1ヶ月音沙汰が無かった癖に、いきなり連絡が来た








久しぶりの電話に、何事もなかったかのように出たんだ









「…もしもし」





「あ、聖?明日空けといて 家行くけん」







私の返事も待たずに切られる電話





それもいつもの事











ねえ、えりぽんは本当に聖を好きなの?





いつも心で呟いて宙をかく、私の問いかけ












えりぽんは昔からモテた









あのキャラと社交的な性格のせいか、いつもえりぽんの周りには人が集まっていた








それに加え、あのビジュアル









誰だって好きになる











きっとこんなにも好きなのは聖だけなんだと思う








きっとえりぽんには他の人が何にも居て、聖はその不特定多数の1人









そう分かっているからこそ、不安で不安で仕方がない







えりぽんがどう思ってるのか、何をしてるのか気になっても何もできない









だからと言って聖の事好き?だなんて聞けない









うざい女って思われたくないから







だから、えりぽんの都合のいい女になる





そう決めたんだ








えりぽんからの誘いがあった日は大切な用事じゃない限り先約を断ってまで予定を空けた







自分でも馬鹿だと思う







本当は、何回も離れようと思った








なのに









そう決めた日に限って優しくされる







指に、吐息に、翻弄される









聖のこの気持ちはどうしたら伝わるの?






どれだけ愛せば伝わるんだろう






同じ時間を過ごせば過ごす程膨らむ想い






でもその想いを伝えられないもどかしさ






もっと器用だったらいいのに











「…えりっ、ぽん …ひぅっ…っ」






好きだよ





大好きなの







笑った顔も怒った顔も照れた顔も全部






「…っ…え りぽっ…っ」








涙は止まってはくれない








いつもいつも抱かれるたびに寂しくなって虚しくなって涙が溢れる








「…んー みずき…?」







「…っ! え、えりぽん ごめんね起こした?」





目をごしごし擦って平然を装う








するとえりぽんに腕を掴まれた







「何で、泣くと?」







そんな寂しそうな顔で見ないでよ





えりぽんには他の女の子がいるんでしょ?






私なんて居なくても寂しくないんでしょ?









「えり、何かした…?」







上半身を起こして、聖を覗き込むような形で尋ねるえりぽん









「なん…っ、でもな い」






「泣かんでよ、聖が泣いてるとえりも悲しい」







なんで、そんなに優しくするの






好きでもないのにずるいよ








「…ほんとに、なんでも…っない から…っ」







また目を擦ろうとすると、目痛くなるからそう言って触れたのはえりぽんの温かい指だった







親指で涙を拭って、聖が泣き止むまで頭を撫でてくれた







それが心地よくて目を細める








変に問い詰めたりしないのもえりぽんの優しさ







こうやって聖が落ち着くまで待ってくれる












「聖はえりと別れたい?」







突然投げかけられた質問






唐突過ぎて言葉を失う







「最近、聖の笑った顔見てない


笑顔が無くなった理由がえりなら…」











聞きたくない…








聞きたくないよ…













「別れたい」









全身が凍りついた






別れたい











今の私が1番聞きたく無い言葉だった


















「聖、答えて?

まだえりを好き?」









そんなの決まってるじゃないか









「…好き」






いつまでたっても返答がないからえりぽんの方を見ると



えりぽんは片手で目を覆っていた








…えりぽん?








泣いてるの…?









「ごめん、聖の口から好きって言葉聞くの久々だから」








”嬉しくて”








堪らず抱き締めた







こうやって聖から抱き締めるのはいつぶりだろう







好き、好き、と思うだけで伝える事を忘れてた







言葉にしなければ伝わるはずないのに







言葉にする事をしなかった











だからこんなにもすれ違ったんだ









「聖…好きだよ」








聖の胸で泣きながら想いを伝えてくれるえりぽん









「聖も好きだよ」









本当は知ってた








えりぽんが誰よりも弱い事







なのに、忘れた振りをしてた









「じゃあ何で連絡くれなかったの?」







「うざい女って思われなたくなかったから」






「えりぽんこそどうして連絡くれなかったの?」








「聖からしてくれるの待っとった」







ほら、言葉にすれば簡単だ






お互いの言葉不足でこんなにもすれ違っていた








「他の女の子は?」








「は?そんなんおらん」








「嘘つき」








「本当やし!!えりには聖だけ!!」







勢いで言って自分で照れるえりぽん







そんなえりぽん見たらこっちだって照れるじゃないか








「その、色々不安にさせてごめん」








「ううん、聖の方こそごめんね」








見つめあって2人で笑った








心から幸せだと思った






2人でベッドに座って微笑み合っていると







「あーーーーーもう我慢できん!」









そう言って聖に覆い被さるえりぽん








ちょ、ちょっと何!?!?









「聖の裸見せられて我慢なんてできるわけなか」








そうだ、昨日?いまさっき?の情事を終えたままの姿だった








「てなわけで、いただきます」












2人でベッドに沈む











今日はえりぽんの温もりが何倍も暖かく感じた

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