小説

□冷たいシーツ 鞘×生
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カーテンの隙間から漏れる光で目を覚ます





ん……




隣に手を伸ばしてみたけど





ベッドはもう冷たくなっていた





昨晩の熱さが嘘のように冷え切ったシーツ






居るわけ、無いもんね










今でも忘れない、あの広島公演の日





公演中に泣いてしまったうちを心配してか、わざわざホテルの部屋を訪ねてきてくれたよね







いつもはそんな事しないのに





部屋に来たのはいいもののふざけてみたり、ギャグを言ってみたり、いつも通り接してくれた







そのさりげない優しさにいつの間にか惹かれてたんだよ






うちの気持ち、気付いてた?






…気付く訳ないよね







そのままでよかったんだよ





気付かれないままで







なのにどうしても我慢できなくなったうちは、昨日賭けにでたんだ





1人部屋だったうちは、えりぽんにうちの部屋で遊ぼうと声をかけた





みんなも居るからえりぽんもおいでよって






でも全部嘘






声をかけたのはえりぽんだけ





どうしても2人になりたかったから








誰も来よらんやん そう言ったえりぽんにキスをした






うちが、煽った







えりぽんってえっち下手そうだよね〜なんて普段言わないような言葉を余裕ぶって言いながら







負けず嫌いだから誘いに乗ってくる事はわかってた






”は?そんな事なか なんなら試す?”






予想通りだった





うちはズルい






こんな手でしか手に入れられなかった






手に入れたのは心じゃない






それでもいいって自分で決めたのに






残るのは虚しさだけだった





でも後悔はしてない





たった一度でも交われて幸せだった





優しくキスをされた場所が今でもその感触を覚えてる







シーツは冷たいのに、体に残る微かな熱は消えなくて






その熱を感じるたびに、えりぽんが恋しくなる







ねえ、何で抱いたの?






うちに煽られたから興味本位?








だとしたら






寂しいよ






部屋を出るときくらい声かけてくれてもいいじゃんか…








あれ…涙が出てきた






馬鹿みたい





泣いたって解決なんてしないのに






もっと寂しくなるだけなのに






どうしてこんなにもうちを夢中にさせるの






それなのに、どうして簡単にうちの腕をすり抜けるの







離れて行かないで







ずっと側に居てよ…







「えりぽん…」






涙は止めどなく流れてシーツを濡らす






えりぽんの温もりを求めてまた隣に手を伸ばす








でもやっぱり温もりは残っていなかった








もう元には戻れない






きっとお互い避ける生活になるだろう






それだって覚悟してた






なのに、想像すると辛い






離れて行くえりぽんを黙って見るしかないんだ






何でこうもうまくいかないんだろう





どうして素直になれないんだろう










ガチャ






ベットで涙を流しているとドアの開く音がした








「あ、里保 やっと起きたんかいな

ほら、これココア




…って何泣きよおと?」









そこに居たのはうちが恋い焦がれるあの人の姿だった






えりぽんはゆっくり歩み寄ってベットに腰掛けた





「何、どうしたと?」






聞いたことの無いくらい優しい声でうちに問いかける






「…ごめっ 何でも、な い」





泣きすぎてうまく話せない








そんなうちの頭を優しく撫でると






布団をめくって隣に横になってくれた







「ちょ、里保!服着いよ!」





そう言うとベットに入ったのに直ぐ出てしまった








「何で 戻ってきたの」







後ろを向いてしまっているえりぽんに尋ねる






「何でって、飲み物買いに行ってただけやけん」







え、そうなの?







黙っていなくなった訳じゃないの?








「そんな事どーでもいいけん、はよ服!

そんな姿見せられたらまた歯止めきかんくなる」






「ごめんね こんな事して」






「何で謝ると?えりは嬉しいよ里保とやっと一つになれて」








え?





嬉しい…?







「え!えりぽんっ」







驚いて立ち上がると、いい加減にしい!丸見えやけん!!って言ってシーツでグルグル巻きにされた






「えりぽん、あのっ」





聞いてもいいんだろうか





少しでも可能性があると思っていいんだろうか







でもなかなか言葉にならなかった






うちの事どう思ってるの?



その一言が聞けなかった








「えりは、ずっと里保が好きだったよ」






口を開いたえりぽんが放ったのは、うちが夢にまで見た言葉だった








「え、え、いつから!?」






「加入した時からずっと。一目惚れやった」







うそ…これは夢?







ほっぺをつねってみる






「…ひはい (痛い)」






「何しよーと?笑」






「夢かと思って…」






そう言ってえりぽんを見ると





「夢じゃなかよ」






そう言って抱き締められた







嬉しくて嬉しくて






ギューーっと抱きしめる手に力を入れる






すると顔を真っ赤にしたえりぽんに




「ふ、服着い!!!!」






そう言ってベットに突き飛ばされた





まったく、乱暴なんだから






そう思いながらうちは服を着始めた

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