小説

□勘違いと思い込み 工×石
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「カンパーイ」



「お疲れ様でしたー!」







今日、無事にツアーの千秋楽を迎えた



その打ち上げにハル達は来ている





沢山の花火を上げてもらったり、サプライズでパジャマでパフォーマンスしたり凄く楽しい千秋楽だったと思う






「ぷはぁー!ジンジャーエール最高!!」



ハルが体に染み渡る炭酸を感じていると





「どぅーおっさんみたい」




ハルを見ながらニヤニヤしているこいつ、石田亜佑美





「あゆみも1回飲んでみなよ!
めっちゃ美味しいから!」





そう進めるけど、やだね〜 そう言ってまたニヤっと笑った後、反対隣の譜久村さんの方へ行ってしまった





せっかくハルが進めてやってるのに





譜久村さんと仲良く話すあゆみを見つめる




会話の相槌を打ったり、時折寒いギャグを言って滑ったり






やっぱりあゆみの全てが愛おしい






きっかけなんて覚えてない





気付いた時はもう好きだったんだ








でも断られるのが怖くてなかなか言い出せない








…しっかりしろ、ハル



何度そう言い聞かせた事か









「キャーー」




「もう何やってんの〜」





はるなんの叫び声と道重さんの呆れた声が聞こえてきて我にかえる





どうやらまーちゃんがジュースをこぼしたらしい





まったく、手が焼ける





「まーちゃんは悪くないもん」




「佐藤、そういう時は素直に謝るんだよ」






道重さんに言われても謝らないまーちゃん





まーちゃん、ちゃんと謝りなよ
そう言おうとした時







「まーちゃんは悪くないもん!
どぅーが悪いんだもん!!」






……はあ!?!?







「ハルは何もしてない!」





「どぅーが押した!」





「はあ!?まーちゃんなんて触ってませんけど」





言い合いが始まる






まーちゃんはいつもこうだ



何かあればハルの所為にして






「どぅーなんてきらーーい
だいっきらい!!」






「別に好きになってくれなんて頼んでませーん」





売り言葉に買い言葉とはつまりこの事




ハルもついついムキになって反論してしまう







「2人ともいい加減にして」





道重さんの一言終わる喧嘩





「「……ごめんなさい」」




まーちゃんと2人で謝る






って!なんでハルが謝らなきゃいけないの!?






……仕方ない これ以上言っても無駄らしい







話を拗らせても、楽しい打ち上げが台無しになってしまうだけだ







素直に謝るとまたワイワイと楽しい時間が流れた





ハルの視線の先にはやっぱりあゆみが居たて





無意識にあゆみを追う癖が付いてしまっているらしい






重症だ







視線の先のあゆみはやっぱり譜久村さんと話していて





2人が普段から仲良しなのは知っているけど、ちょっと嫉妬してしまう








そんな気持ちを紛らわせる為に他の人と沢山話をした






今回のツアーのよかった所



思い出に残ってる場面



それこそ、好きな食べ物とか飲み物、好きな動物なんかの他愛もない会話もした








そんなこんなで打ち上げはあっという間に終わった






みんなで駅に向かう途中もやっぱりあゆみは譜久村さんと居た





見てるのが辛い






あゆみは譜久村さんが好きなんだろうか




ハルがどんなに気にした所であゆみの本当の気持ちを知れる筈が無くて





ハルにはあゆみを見つめる事しかできない
目で追ったりちょっかいを出して気を引いたり





そんな事しか出来ないんだ





「工藤少年!」





あゆみの事をボーッと見ていると生田さんに話かけられた






げ、面倒くさいのに絡まれた…





「なんですか」






「単刀直入に聞く!あゆみちゃんの事好きやろ!」






……!?!?!?




え、今なんて!?!?




え!?え!?!?





聞くって言うか断言しちゃってるじゃないですか生田さん…






「好きなんだ」





顔に出過ぎやろって笑う生田さん







「でも、あゆみには譜久村さんが居ますから」








言葉にするとそれを更に実感してしまってまた辛くなる






「それは無か」








「どうしてそんな事言えるんですか?」







根拠も無いのに何故かドヤ顔で言い張る生田さん






「なんでって、聖はえりのものやし」








……?



………!?





「ぇぇぇぇえええ!!」






ハルの声が辺りにこだました





隣でケラケラと笑う生田さん






まって、どういうことだ?




1回整理しよう





いやどうやって整理するんだ?







もーーーなにが起きてるんだーー







頭がこんがらがってさっきの生田さんの一言が理解出来ない







「やけん、聖はえりのものやって


付き合っとる」






「えええええええ!!!」






また大声で叫んでしまう




「驚き過ぎやろ」





生田さんはそう言ってまた笑う





「でもハルよく見ますよ、あゆみと譜久村さんが一緒に居るところ」






「あー、それね

あゆみちゃん最近悩みがあるみたいで聖に相談しとおらしい」






そういう事か







「理由も無しにあんなベタベタされたらえりが黙ってる訳無かろ?」





なんだこの無駄に説得力のある言葉は






「あゆみ、何を悩んでるんだろ」




あゆみの悩みなんて最近聞いてない


ハルには言えない悩みなんだろうか



信用されてないんだろうか






「それは自分で聞くんやね
えりからはそのくらいしか言えん


そんじゃあね!工藤少年!!」






そう言うと生田さんはスキップをして譜久村さんの元へ






あゆみも生田さん達の時間を邪魔したくないのか、2人から離れる







「あゆみ!!」







無意識に声をかけていた


不思議そうに首をかしげるあゆみの元へ駆け寄る






「どぅー何?」






何って




あゆみと話したかった




そんな理由だなんて言える訳無くて







「あ、あ!そうだ!コンビニ行こ!
この前あゆみが言ってたチョコ教えてよ!買いたくてさ」








咄嗟に出た嘘




もうちょっとマシな嘘は無かったのか
と自分を責める





「覚えててくれたんだ!いいよ♪」





でも帰ってきたのはそんな嬉しい言葉だった






メンバーに別れを告げ、2人でコンビニへ向かう



別れ際に生田さんを見ると口パクで”がんばれ”と言われた



恰好なウインク付きで






2人でコンビニに歩みを進めるのはいいものの、会話が無い





「ねえ どぅー」





不意に声をかけられた






「なに?」






「こうやって2人で歩くのいつぶりかなって思って」




言われてみれば最近あまり一緒に居ない





ハルがあゆみを意識し過ぎてあまり近寄れないせいもあると思う





でもこうやってあゆみが少しでもハルの事を気にかけてくれてたのが嬉しい








「どぅーはさ、やっぱりまーちゃんが好きなの?」





思わぬ問いかけに言葉が詰まる







「……やっぱり好きなんだ」






寂しそうに俯いてしまったあゆみ





「そんな訳ないじゃん!ハルが好きなのはあゆみだよ!!」






…しまった、やらかした




勢いで言ってしまった



ハルとした事が…




終わった





地球の終わりだ、破滅だ






「あーはっはっは
今のはほんの冗談!」




上手く誤魔化せただろうか




お願いだから、誤魔化されてくれ





「それよりさ!昨日のドラマみた?
あれさー、予想外の展開だったよねー」







………ってあれ?






隣に視線を向けるとあゆみの姿は無くて





あたりをキョロキョロすると数メートル後ろに俯いたまま立ち止まってるあゆみを見つけた




あわててあゆみに駆け寄る







「あゆみ、どうした?」




「……どぅーは冗談でそんな事言えちゃうんだ」






顔を覗き込めば、あゆみの目には今にも零れ落ちそうな涙が溜まっていて





まずい



非常にまずい





「ご、ごめん!嫌だったよね

もう好きなんて言わないから!」






「わたしはこんなに好きなのに、どぅーは冗談で好きなんて言えるんだね」






……ん?私も好き?




ちょっと待ってちょっと待ってちょっと待って




私も好き?



私も好き?




え、え、え、




「あゆみ、今なんて…」






「………」





「お願い、言って」






「どぅーが 好き」









………っっ!?








気付いた時にはあゆみを抱き締めてた






死んでもいいと思った




このまま、死んでもいいと







「ハルも好きだから」






「でもさっき冗談て言った…」





小さく聞こえるあゆみの弱々しい声







「冗談なんて嘘 本気で好きだから」






一度好きと告げてしまえば次から次へと好きが溢れる





体を離すとあゆみの頬には涙が伝っていた







「どぅー、どうしよう

嬉しくて涙が止まんない」




そう言って服の袖でゴシゴシと涙を拭うあゆみ






ハルだけが聞ける言葉





「そんな擦ったら目腫れるよ

な、泣くならハルの胸で泣けば?」




ほら、そう照れながら手を広げるとあゆみがぎゅっと抱き付いてきた



ハルもぎゅぅっと抱き締め返す





絶対離さないから






やっと手に入れた






ずっと手に入らないとおもっていたハルの大好きな人






絶対、誰にも渡さない







後々聞くと、譜久村さんにハルの事で相談に乗って貰ってたらしい







それを見て嫉妬してた自分が急に恥ずかしくなる









……まあ、今がすんごい幸せなんであまり気にしてないですけど♪

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