小説

□ビジネス不仲ってやつ 石×小
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「小田ァ」




MCで響く声



沸く観客




最近わたしと小田ちゃんは不仲で有名らしい


雑誌の特集を組まれるくらい





ファンの方もわたし達の事を”だーさく”って呼んで支持してくれてる




だけど例えビジネスとは言え、小田ちゃんに強く言ってしまう事には変わりは無くて




ファンやメディアに期待されればされる程キツくなる小田ちゃんへの言葉





時には小田ちゃんが気にしてる事に鋭く突っ込んでしまったり





その度に小田ちゃんが顔を歪めてる事にわたしは気付いてる








でもMCで謝る訳にもいかないし、舞台袖で小田ちゃんに謝っても




「全然大丈夫ですよ〜! 気にしないでください」





そう言われるだけ







大丈夫な訳ないじゃん



気にしてない訳ないじゃん






言ってくれればいいのに





でも小田ちゃんは何でも我慢する



同期が居ないから他のメンバーより捌け口だって少ないのに






もっとわたしを頼って欲しい







話し合えばもっといいMCだって作れるのに






……はあ







「……ださん!


いしださん!!」




ハッと我に返ると目の前のには小田ちゃんが






あ、書物してる途中だったの忘れてた






「いしださんボーッとしてましたよ〜」



ニコニコしながら小田ちゃんが話し掛けてくる






「そ、そうかな…」






今さっきまで小田ちゃんの事を考えていたせいでぎこちない返答をしてしまう






「変ないしださん」






書物に視線を落としながら小田ちゃんは答える








他のメンバーはまーちゃんに連れられて廊下で鬼ごっこをやっているらしく、ドア越しにキャーキャーと賑やかな声が聞こえる






ということは、必然的に楽屋は小田ちゃんとわたしの2人きり







…!


チャンスじゃないか?



チャンスじゃないのか…!?





間違いない、小田ちゃんの気持ちを聞くチャンスだ






「ねえ小田ちゃ「いしださん」」





重ねられるようにかけられた言葉







「本当に大丈夫ですから」





え?






「私のこと考えてくれてたんですよね?」







何で分かるの




わたし、声に出してないよね?





「いしださんの考えてる事くらいすぐ分かりますよ」





驚き過ぎて言葉を失っていると






「本当にダメになったら言いますから


私、ちゃんといしださんの事頼りにしてます」






そんな言葉をかけられた




頼りにしてます


そう言われて嬉しいのに上手く言葉にできない








そしてゆっくり書物をしていた小田ちゃんが視線を上げると、目が合った








ちょっと照れくさい







「小田ァ

鬼ごっこするよ!」





照れ隠しに出てきたのはそんな言葉





「は、はい!」






笑顔で答えてくれた小田ちゃん



そんな小田ちゃんの手を取ってわたし達は楽屋を出た






ちょっとだけ距離が縮まった気がした

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