読み物(SF乾海)

□そのドアの向こうに
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この世界に来て3日が経った。
乾は二年生として部活に参加し、向こうにいた時同様にデータを取る日々を送っている。
海堂部長は手塚への引継ぎのために、毎日のように部活に顔を出していて、時々、コートで指導をして帰るのだ。
しかし、二人とも顔を合わせることはなかった。
あの日、乾のポケットから出されるはずだった優勝のメダルは、ポケットに入っておらず、『あれ?あれ?』と何度もポケットを探る乾に、険しい表情で海堂部長は言った。

「俺の気持ちをからかって・・・そんなに楽しいのか?」

それ以降、海堂部長は視線どころか視界にも入れてくれない状況が続いている。

昼休みの廊下で、乾は、一つため息をついた。
自分が元の世界に戻れないことと、なくなってしまった優勝メダルが、どこかで関係しているように思えてならないのだ。
あれさえ見つければ元の世界に帰れるに違いない。
そうでなくとも、海堂と一緒に戦った中学生最後の試合の思い出が詰まっている。
絶対に見つけなくては行けない。

今日はどこを探そう。

家の中も通学路も校舎内も、思いつくところは全て探したはずなのだ。
正直なところ八方塞がりの状態。

「乾」

後ろから声をかけられて振り返ると、桃城が立っていて、ちょいちょいと指で乾に来るように合図していた。

「桃」

いつもの癖で、桃城を呼び捨てにしてしまったが聞こえなかったらしい。
この世界では、桃城は先輩。呼ばれたのではついていくしかなく、ゆっくりと後を追ったが、着いた先で後悔した。


つづく
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