読み物 けれど空は蒼シリーズ(乾海)2016/4/11完結
□8・宣戦布告 三角関係inui side
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研究仲間ともだいぶ打ち解けて、ここら辺のシステムもようやく慣れてきた9月中旬、アイツが現れた。
その日、俺は約一週間ぶりに日の光を浴び、近くのスーパーへと買い物に出かけていた。
まともな食事は大学のテラスでの一食のみで、良い食生活とは言えないだろう。
これでは海堂から叱られてしまうし、心配をかけたら大変なので、久しぶりの休日、まとめたいデータがあったが買い物に行くことにした。
「いーぬい先輩」
聞きなれない声に後ろを振り向くと、俺の身長よりも若干低めの男が立っていた。
帽子の唾を片手でつまんで、人を食ったような顔つき。
見たことのある顔だが、記憶の中の彼はもっと小さくて幼い。
「越前」
「ちーす。こっちに来てるって知って、様子を見に来たんだけど。変わってないっすね先輩」
しゃべり口調は昔と変わらない。
変わったと感じるのはその身長と声色くらいか?
以前と変わらない口調だが、俺はというと、とうとうこの日が来たと思った。
越前が俺の前に現れた理由。
それはただ一つ、海堂のことだろう。
「ところで先輩、海堂先輩元気?」
案の定、越前は海堂のことを聞いてきた。
俺は中学の頃から直感的に、越前が海堂のことを想っているのを知っていた。
それは、試合の合間のちょっとしたやり取りや、学校生活などから。
「元気だと思うが。お前はどうだったんだ?」
おもむろに話題を変えようとする俺に向かって、鼻で笑うと
「元気だよ。この前の大会は手塚部長に負けちゃったけど、順調にランキング上げてるし・・・って乾先輩なら知ってるか。それより、ねぇ。俺の知り合いの話聞いてくれる?遠距離恋愛になっちゃった子がいるんだけど、彼氏はホント遠くて、全然会えないみたいなんだ。もしも、寂しそうにしてたとして慰めてやったら、その子、心変わりするかなあ」
これは俺に対する挑戦だ。
俺たちに対する宣戦布告だ。
「そうだな・・・きっとその子は凄く悩むだろうな。大好きな遠距離中の彼氏と慰めてくれた友達の間で板挟みになって」
ここで俺の考えを言ったところで、きっと越前はもう決めている。
海堂の所に行くことを。
なんせ、中学から想っていたのだから。
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