読み物 けれど空は蒼シリーズ(乾海)2016/4/11完結


□7・三角関係 kaido side
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「海堂先生、今日もありがとうございましたっ!」

図書ボランティアで青学初等部に通うようになって半年が過ぎた。
夏が駆け足で過ぎ、季節はすっかり秋を迎えている。
結局、今年の青学テニス部は全国大会の切符を手にしたものの、初戦を突破することは出来なかった。3年生は相当悔しがっていたが、それでも良くやったと俺は思っている。なにせ、4月までは練習という練習をしてこなかった連中だ。この2、3か月という短い間に、ここまで伸びるということは、センスがあったに違いない。

「あたしがもっと早くに示してやればよかったんだ」

俺たちだけで反省会をしたときに竜崎先生が呟いた。
いいかげん大人になった俺たちは、その言葉は否定も肯定もしてほしいわけではないということを知っている。
知っていたから

「先生、飲みましょう」

と、日本酒を猪口に注ぐというやり方を選んだ。


飲み始めて1時間が過ぎた頃、『そう言えば・・・』と竜崎先生が携帯をいじりだした。

「昨日、氷帝の榊監督からテニス協会の連絡をメールでもらったんだよ。その中に追伸があって、どうやら手塚と越前が帰国するらしいんだ」

俺たち3人の酔いが一気に吹っ飛んだ。

「手塚と越前が?」
「先生、それ本当ですか?」
「うわー、皆でお祝いだー」

部長はドイツに、越前はアメリカに留学した後、二人とも日本には戻らずにそのままプロになった。そして、海外で場数を踏んでいる。
日本から出られない俺とは次元が違う。

部長と越前が帰国・・・か

俺の心の中は懐かしさと嫉妬が渦を巻いていた。

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