長編
□脱獄編
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あれから数日間、何となくのんびりと刑務所生活を過ごしていたが、そののんびりスローライフは突如として崩れ去った。
一通の手紙をきっかけに…
ーーー
※ジャン視点
「沈黙の掟の下、俺に従えジャンカルロ」
ベルナルドにそう言われて後を着いて行くと、行った先に待っていたのは幹部連中とナギサだった。
「おっせーんだよ!」
俺とベルナルドが来ると、イヴァンの馬鹿がぎゃーぎゃーと騒ぎたてる。
「まーまー、落ち着け。イヴァン」
ナギサがイヴァンを宥めている。ありがてえ。俺が言ったところで噛み付かれるだけだ。
それから、そこで告げられたのはトスカニーニの紋章がついた手紙に記された内容についてだった。
内容を要約すると、カヴァッリの爺様の幹部位を俺が貰い、さらには俺が幹部とナギサと一緒にここからの脱獄に成功して帰った暁には俺が2代目カポとなり、空いた幹部位にはナギサが入る。
というものだった。
全員の顔を見回すと、皆真面目な表情をしている。どうやら真実のようだ。
幹部とナギサにはすでに手紙が届いていたらしく、内容も把握していると言っていた。
「俺は認めねーぞ!!ナギサの幹部昇格ならまだしも、ジャン!てめーは認めねぇ!!!」
イヴァンがまた騒ぎ出した。まあ、そりゃ俺だってナギサが幹部昇格ってのは納得さするよ?だって、アイツはそれだけの実力と実績があるし、むしろ幹部でないのが不思議な位だもんな。
「私は別に納得してるけど」
ナギサがそう言うと、他の幹部も同意の意を唱える。
流石のイヴァンもここまでなると逆らえないようだった…
…って、アレ?
今、ナギサのヤツ「私」って言わなかったか?
え?しかもよくよく聞いてるといつもよりも声が高いような…まるで、女みてーな…
思わず、顔を上げてナギサの方を見ると、先程までは目深に被っていたパーカーのフードを外していて俺の方を向いていた。
「ん?どうかしたか?ジャン」
「アレ、ナギサお前…え?」
「?」
俺が困惑していると、その様子を見たベルナルドがナギサを見た。
「ん?…あぁ、そうか。ジャン、お前はそういえば知らなかったんだっけか」
「は?!…いや、何が…」
「ナギサは女だぞ」
あぁ〜女ね。ハイハイ。ンだよ、ったく驚かせやがって…そりゃそうだよな。アイツは…って
「ハアアアアアアア?!?!?!」
いや、確かにちょいちょい女みてーだなぁとか思ってたりもしたけど、まじで?!
「え?!ちょ、まじかよ」
「まあ、私の性別知ってるのなんて限られた人間だけだからね。こういう所とかではとくにだけど。バレないように男装してるんだ」
「まじでか…」
俺は言ってもこいつとはそこそこ長い付き合いではあるが、まさか今までずっと気づかなかったとか…まじかよ!
「ジャンも幹部になったことだし、教えとこうと思ってね。驚いた?」
そう言って、悪戯っ子の様な笑みを浮かべるナギサは可愛かった。
女なんだってことが…よく分かった。
「って事は、7つの大罪のリーダー、「強欲」の正体は女っぽい男じゃなくて、正真正銘「女」だっていうのか…」
「そういうことー。ま、今はまだ油断できないから今まで通りに接してねー。」
そう言うと、ナギサは再びフードを目深に被り直した。
それから、俺が決意を固めると今回はそこでお開きとなり各々戻っていった。