長編

□脱獄編
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「MAFIA READERS ARRESTED」

紙面の真ん中、大見出しに書かれているその文字の下には四人の男が写った写真が掲載されている。

だが、その下にさらにもう一つ別枠で見出しがついていた

「7 of GRATE SIN READER, "Greedy:Nagisa” ARRESTED」

その文字と一緒に写るのは、男とも女とも見受けられる一人の囚人の姿。

それらを引っ括めた記事には「イタリア系マフィアCR:5幹部及び幹部級続々逮捕」、「CR:5壊滅の危機か?!」、「遂に、7つの大罪のリーダーが姿を現す」等といった謳い文句が書かれていた。


ーーー

マジソン刑務所内で有名な男がいた。

そいつはどうもすんごい幸運の持ち主だから、ということから「ラッキードッグ」と呼ばれている。

名をジャンカルロ・ブルボン・デル・モンテという。

このジャンカルロという男はいわゆる美形だ。金髪の美形。

そんでもって、人懐こい性格。人受けが良いタイプだ。つまり、モテる。女にもそうだが、コイツは男色家にも好まれそうな顔立ちだ。

だが、日常生活はどうにもズボラらしく、風呂嫌いだというのだから、あのサラサラの金髪引っ張ってやりたくなる。

んでもって、趣味は脱獄とか。ふざけてるよな。まじで。
まあ、とにかく「…ぃ」ラッキードッグとはそういう男で…「おーい!返事しろよナギサ」


「ん…ジョシュアか」

今、俺の思考を停止させたのはここ、マジソン刑務所の看守のジョシュア。真面目な奴で、囚人イビりとかしない良い奴。

「何か考え事か?」

「んー…まあ、そんなとこ」

「まあ、何でも良いが朝飯行けよ」

「はいよ」

そう言われたので、とりあえず一旦思考を止めて食堂に向かった。
「ナギサ〜!!」

食堂に入った途端に俺に飛びついてきたのは先程も言っていたラッキードッグことジャンカルロだ。

「おはよージャン。朝から元気だね」

「ンもー、待ちくたびれたのよ、ダーリン」

「ハイハイ、悪かったなハニー?」

こんなやり取りはいつものことだ。

皆さんもうお察しかと思うが、俺はマフィアCR:5の構成員だ。といっても、俺は他の構成員とは違って、カポであるアレッサンドロの直属の部下であり一つの部隊をまとめている。

結果、俺は幹部ではないが幹部とほぼ同等の扱いをされている。
では、何でそんな俺とジャンが知り合いかといわれれば、何かと会うことがあったからだ。

まあ、何だかんだでウマも合うからな。仲も良い。まあ、コイツ良い奴だしな。

「おいおい、早速浮気かい?」

そう言いながら、現れたのはベルナルド・オルトラーニだ。彼は幹部第二位の位置にある大変聡明な幹部サマだ。

ちなみに、俺とジャンが知りあったのもベルナルドを通してだった。

「アラ、ダーリン嫉妬ォ〜〜?」

「イヤイヤ、別に構わないんだよ。」

「おはよう、ベルナルド。」

「あぁ、おはよう。ナギサ。」

ベルナルドとは仕事で何かと一緒の事が多いからそこそこ仲は良い。

……前髪、大丈夫かな…

「今、失礼な事を考えていなかったかい?」

「いやいや、そんなことはなーいよ」

なんて、軽口を叩きながら三人でクソまずいムショの朝飯を食べる。

そこで、ふとジャンが口を開いた。

「いやー…しっかしホントに勢揃いしてんだな。幹部が」

「俺は幹部じゃないけど…」

「お前は似たようなもんだろ、ナギサ」

「へーへー。そうですねー」

そうだ。今、このマジソン刑務所には俺を含めて組織の幹部級が勢揃いしている。

ーカヴァッリの爺様を除いてだが。

「誰か他の幹部に会ったのか?」

「さっきルキーノと会ったんだよ」

「あぁ…ルキーノか」

ルキーノ・グレゴレッティ、現在幹部第三位の大きい色男。

特徴はあの赤毛のライオンヘアーかな。

基本的に幹部全員とは知り合いだから彼のことも知っているし、仕事も何度か一緒にしたことがある。…ベルナルドほどではないが。

そうか、あのライオンに会ったのか。俺もその内会うことになるなぁ…

そんな風に考えていると話は他の幹部の話になっていたらしい。
「あとはイヴァンと…あとジュリオもそろそろくるはずだ」

「おいおい、ホントに勢揃いじゃねーか。大丈夫かよ、ウチ」

なんて、ジャンとベルナルドが話してる間はそれとなく会話を聞き流しながら腹に飯を流し込む。

「なあ!ナギサはジュリオって知ってるけ?」

ふと、今まで話を聞き流していた俺にジャンが話しかけて来た。

ジュリオ…狂犬やらマッドドッグやらの通り名で知られる凄腕の現役戦闘員だ。

俺も諜報部の隊長を務めながら、現役の戦闘員として前線に出たり、時には暗殺の依頼を行ったりしているから、ジュリオのことはよく知っている。

「あぁ、知ってるよ。仲良いしね」

「え?そうなん?」

「ベルナルドと同じ位の頻度で一緒に仕事する事があるからな」

「ほー…そっかー」

ジャンは会ったことがないのだろう。

まあ、噂だけだとジュリオのイメージは相当なもんだが、あいつはかわいいやつだと思う。俺は。

「ま、今度紹介してやるよ」

そうベルナルドは言ったところで、立ち上がってその場を後にした。

俺もジャンが食べ終えてから二人で食堂を後にした。
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