みんな大好きお兄ちゃん

□初めまして王道学園
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〔皇藤学園高等部正門前〕


いま俺の目の前にはそびえ立つ壁、と門。

有刺鉄線や電圧注意の看板が見当たらないから、刑務所ではなさそうだ。


「これって校門、だよな」

「もちー」


仙道孝助17歳。

高校生活は順調で、日々楽しく過ごして来たと思う。

しかしこの春、友人の両親が海外に行く事になってから状況は一変する。


友人は日本に残りたいと必死に交渉し続けた結果、両親から「俺が一緒に全寮制の男子校に転校するならば」という条件を付けられたらしい。

何故そこで俺なのか。


藁(わら)にもすがるような状態の友人に根負けし、2人でその全寮制男子校の編入試験を受けた。

共に合格通知が届いてから郵送で手続きを終わらせ、学校…いや、学園に来るのは今日が初めて。

緊張しているようなしていないような、よく分からない心境(しんきょう)だ。


「トモ、呼び鈴有ったぞ」

「ポチっとな」


元凶である剣崎智明ことトモが呼び鈴のボタンを押せば、リーンゴーンとなんだか高そうな音が門の周辺に響く。

無意識にピンポンだと思っていたから予想が外れ、びっくりしてその場から一歩後退ってしまった。


「ピンポンじゃ無いのかー」

「そうだな」


お互い似たような事を考えていたらしく、首を傾げながら振り返ったトモがこちらの顔を覗き込んできたので頭を撫でておく。

そうされると喜ぶと本人が言うからよく撫でていたので、今では癖になって無意識に手が伸びるようになってしまった。
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