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「あ・・・暑い。冬なのになんなのこの気候・・・あたし溶けちゃうかも・・・アイスになってハッピーに食べられちゃうんだ・・・」



「まずそうだね」



大きな海に一つの船。


その船にはS級へと挑む挑戦者とそのパートナーが乗っていた。


そして、椅子に、水着の姿でグデーーンと座っている(寝ている?)ルーシィとその隣には同じような格好のハッピー。



「ルーちゃん・・・だらしないよ、その格好・・・;」



「この辺は海流の影響で年中この気候なんだとさ。」



「ふえぇぇぇー・・・」



レヴィとカナも暑そうにしかし、ちゃんと座って言うその横に、ウェンディも机に顎をのせてグデーンとなっていた。



照りつける太陽の下、ジュビアはいつものようにちゃんと服を着て、しっかりと立っていた。



「ジュビア、暑くないの?その格好・・・」


ジュビアの服装は冬にも近い服装だった。



「暑くはない・・・しいて言えばグレイ様の裸体がアツい!!!」



最後のほうは目をハートにして言うジュビア。


その視線の先には裸で椅子に座って、グデーンとしているグレイの姿。



「あぢぃ・・・・」



「グレイ!!パンツくらいはいてよっ!!!」


リサーナが頬を少し朱に染めながら怒鳴るも、聞く耳は持たず・・・。


「リュウ〜・・・グレイに何か・・・」


言ってやってよ・・・と言おうとしたリサーナだったが、いつもだったら、グレイが脱ぐ服をグレイへと呆れながら手渡す彼女の姿がない事に気がついた。



「あれ?リュウは?」


「リュウならここだ。」


リサーナの問いに答えたのはフリードで彼はクイッと親指で後ろを指した。



そのには日陰が出来ている船の隅で座ったままピクリとも動かないリュウの姿。


「リュウ、大丈夫・・・って、ここ涼しい。」


リサーナがリュウの隣で腰掛ければそこだけ涼しい事に気がついた。



『フリードの術式でねー・・・』



ゆっくりと顔を上げたリュウはリサーナへと言えば、ピピッと空中に文字が浮き上がった。



「【この術式内は気温を-15℃下げる】へぇー、だからこんなに涼しいのね。でもフリードってば優しいのね、今回は敵に当たる
リュウに対して術式描いてあげるなんて・・・」


ナツはウェンディがトロイアをかけてくれないと酔いに悩まされているのに・・・



「・・・・見ていてかわいそうでな・・・。」


「けけけっ、とか言って、こいつもリュウにはかなり甘いぜー?」


フリードが答えれば、後ろでビックスローが、ンベッと舌を出しながら答えた。



「お前らっ!リュウに近づくなっ!暑苦しい!」


グレイがシッシッとフリードとビックスローへと言えば、リュウはまたも顔を俯かせたまま動かなくなったが、ボソッと呟いた。


『私は、何も着てないグレイのほうが近づかないで欲しい・・・・』



「(ガンッ!)」


っとショックを受けるグレイだったが、漸く自分が何も着ていない事に気がついた。



「お前、暑いの苦手なのかー?」


「なのかー?」


「なのかー?」


ピクリとも動かないリュウの前にしゃがみ込むビックスローと、その周りを飛び交うピッピ達。



『ある程度は我慢できるけど・・・基本暑いのは苦手・・。慣れてない。あっちの世界もここまで暑い事はなかったし・・・』



「そーか・・・。まぁ、無理スンナよー」


ポンポンッと頭に手を置くビックスローに、リュウはふふっと笑って御礼を言った。




色々な箇所で色々な話をしていると、船の向こう側に大きな島が見えてきたようで、全員がそちらを見た。(リュウは顔を伏せたままだったが)



「見えてきたね。」


「おお」


「あれが・・・」


「あれが天狼島!?」


「すげー形してんな」


「島の上に島!?」


「うぷっ・・・」


「ナツ、もうすぐだよ!」


口々にいろんな言葉が飛び交い、酔っているナツの言葉以外、もう誰が何を言っているかも分からなかった。



「あの島にはかつて妖精がいたといわれていた。」



船の上から声が聞こえてきて全員がそちらを振り向けば、夏使用の服を着ているマスターの姿があった。


「マスター。」


「そして、妖精の尻尾初代マスター、メイビス・ヴァーミリオンが眠る地。」



「何だよその服は!」


「だって暑いんだもん。」


「服着てない人が言う?」


グレイの言葉に、マスターがフイッと顔をそむけながら言えば、すぐさまルーシィがツッコミを入れた。



「これより、一次試験の内容を発表する。」


マスターの言葉にウェンディが首を傾げた。


「一次試験?」


「毎年何段階かに分かれてるんだ。」


メストが説明すれば、納得したように頷いた。



島の岸に煙が立っている位置に、8つの通路がある。

1つの通路は1つの組しか入れない。

そして通路の先はこうなっていると、図を見せてくれた。



『・・・・・・』


その説明を耳に入れながら、チラッとその図を見るために顔を上げた。


そこには激闘が三組、闘が二つ、静の字が一つあった。



激闘には、ミラ、エルザ、ギルダーツの顔が書いてある。


そのルートを突破できれば一次試験合格との事。



激闘は現役S級魔道士を倒さねば突破できない最難間ルート。


闘のルートはこの8組のうち、2組が闘い、勝った方が進めるルート。


静のルートは誰とも戦闘せずに突破できるルート。



「一次試験の目的は‘武力‘そして‘運‘!!」



言い切ったマスターに皆がガビーンッと口をあけた。


((((((運ってーー!!?)))))



「ラクサスは参加しねーのか?」


ナツが息も絶え絶えに言えば、マスターはニッと笑った。


「ラクサスはこの島を自由に歩き回っておる。この広い島でラクサスに会い次第、戦闘開始じゃ。無論、ラクサスに負ければその時点で失格とする。」



「「「「「なっーーーー!!???」」」」」



全員が心の中で、ラクサスには会いませんようにと祈ったのだった。



「ではっ!第一試験開始じゃっ!!」


マスターの言葉に全員がキョトンとした。


「は?」


「ここ・・海の上よ・・・?」


グレイとリサーナの言葉にマスターはニッと笑みを浮かべた。


「そういう事かっ!!ハッピー!先に行って通路を選ぶんだ!!」


「あいっ!!」


ナツがいち早く趣旨に気がつき、ハッピーと共に船から飛び去ろうとする。



「ナツ!!?」


「ずりぃ!!」


口々に言うも、ナツとハッピーは見えない壁に激突して落ちてきた。


「術式!?」


カナが驚きに目を見開けばフリードとビックスローは先に島へと飛んでいった。


「安心しろ、5分後には解けるようになっている。」


「ずーーっと閉じ込めときゃいいじゃねーか。」


「それじゃ試験にならん。」


去っていく二人に、船に残された者たちは口々に文句を言う。


「おい!じぃさん!あんなんありかよ!?」


「まぁ、レースじゃないし・・・」


「あいつを先に行かせたら島中、術式だらけにされちまう!」



「そうだ!レビィなら!!」


「うん!書き換えられるよ!でも・・私とガジルだけー!」


あっという間に術式を書き換え、ピョンッと船から飛び降りるレビィとガジル。



「レビィちゃん!!?」


「ごめんね?ルーちゃん。じゃ、皆!おっ先〜!」



そう言ってガジルとレビィは見る見るうちに見えなくなった。


「私もフリードとは付き合い長いからねー、この位の術式なら書き換えられるわ!」


「エバーグリーン!!」


そしてエルフマンとエバも船から飛び降り、泳いでいった。



「後何分足止め?」


リサーナがジュビアに問えば、彼女は後4分ですと答えた。


「なっ!?じゃぁ一分もしないうちにレビィは術式を書き換えたのか?」


カナがその事実に驚きの声を上げた。



「おいっ!リュウ!お前なんとかできねぇのか!?」


グレイがユサユサとリュウの身体を揺する。


『まずせめて下履いてから話しかけてくれるかな?』



「うおっ!?」


ぎょっと驚きに声を上げたグレイはソソクサとズボンを履いた。



『まぁまぁ、マスターも言ってたじゃん。レースじゃないんだしさー、もうちょっとここにいようよ。』



涼しげな表情を浮かべるリュウに、グレイは汗をたらした。


「お前、ただそこから動きたくねぇだけだろ?;」





ーーーーーそして五分後



「「「「「解けたーーー!!!」」」」」


術式が解けたと同時に、皆がいっせいに船から飛び降りた。



ナツは早々にハッピーと共に空を飛んでいき、ジュビアとリサーナは、水と魚になって物凄い速さで泳いでいく。



「リュウ!ほら!いくぞ!!」


グイッとリュウの腕を引っ張り立たせ、術式の中から引きずりだすグレイ。



『慌てなくてもルートは運だってー、ゆっくり行こうよ。最初だけでもー・・・暑い・・・』



のんびりと言うリュウに、グレイは、あーもう!!とリュウを背に背負った。


「アイスメイク!フロアー!!」



リュウを背負ったまま、アイスメイクを発動させて海を凍らせて、島まで滑っていった。



「やる気出してくれよー、リュウさんよぉ・・・・;」



シャーっと滑っている間、背で暑さに項垂れているリュウへと言えば、リュウは笑った。



『やる気ーあるよー。ただこれはルートを何番目に選ぼうが1/8だから一緒じゃないー?』


「あのなー・・・;」


『グレイ、焦ってもいい結果が出ないよ?大丈夫、私だってちゃんとやるべきときは動くからさー。今はゆっくり行こうー?
ゆっくり進めるのなんてきっと最初だけ出しさー。』



「たくっ・・・しゃーねーな;」


グレイは呆れたように笑うも、最初の試験はレースでない以上、焦らずに落ち着いて行くか、と深呼吸をした。



島に着いて、グレイの背から降りればのんびりとした歩みで進んだ。



「×印が5つか・・・。」



『フリードとレビィ、エルフマンにジュビア、ナツかな?』



「残りは、俺とカナとメストか。どの通路にする?」


『ナツはきっとエルザ狙いでEか、ギルダーツ狙いのGかな?Gが残ってるってなるとEに進んだような気がする。』



「G!?ギルダーツか!?Gはよそうぜ!」


『いやいやいや、Gだからギルダーツ、Eだからエルザとか単なる予想だからね?だから・・・あえてそこ行こうか?』



「マジ?」


『いや、グレイが行きたい場所でいいよー』



「・・・・いや、Gにしよう。迷うと碌な事がなさそうな気がする。」



『じゃーGに決定!』



そして二人で暫く歩いていると・・・・



『闘・・か。』


「ギルダーツじゃなくってよかったー・・・。」



心底安心したと言う感じにため息を吐くグレイ。



『・・・・・』



「リュウ?どうした?」


『んー?ちょっとねー・・・。私たちのほうが先にここにいるって事はさ、私たちより先に入ったメンバーとの戦いではないでしょう?』



「あー・・まぁそうだな。」


『だとすると、メストとウェンディのペア・・・もしくはカナとルーシィのペアと闘うことになるのか・・・・;』



「やりづれぇか?」


『まぁー・・・カナの応援もしたいのは確かだけどねー。大丈夫、そうなった時はちゃんと闘うから!ね?』



「・・・おう。」


『でも・・・メストの方が闘いやすいかな。ウェンディには悪いけど。』


「メストか・・あいつとやって勝てるか危ういとこだぜ・・・・」



そんな話をしながらよいしょっとその辺の石に腰掛けて待つことにした。



『そうそう、メストのことについて聞きたかったのよね。私彼のこと知らないし・・・』



「あん?そーだっけ?」



『うん。』



「あいつは・・・・っとお出ましみたいだぜ?リュウ。」



立ち上がるグレイの横に並ぶように立ち上がるリュウ。




・・・・・・・・・・・・・
(カナじゃありませんように・・・・)

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