short

□坂田家の食卓
1ページ/1ページ



二日酔いの身体を引きずって立ち上がり、寝室の襖を開けると、味噌汁のいい匂いが俺の鼻孔を擽った。
その足で腹をボリボリと掻きながら台所へ向かうと、俺に気付いた志織が花のように優しい笑顔を向けた。

「おはよう」
「おう。今日の飯何?」
「今日は焼き魚とお漬物とお味噌汁だよ」

魚焼きグリルからこんがりと焼けた魚を志織が取り出して皿に移す。

「銀ちゃん、昨日は結構飲んで来たみたいだったけど大丈夫?ご飯食べれる?」
「おう。味噌汁ちょっと熱めに頼むわ」
「うん、分かった。もうすぐ出来るから神楽ちゃん起こして貰っていい?」
「あいよー」

居間に戻って神楽が眠っている押し入れの襖を開いて爆睡している神楽に声をかける。

「おーい。もうすぐ飯出来るから起きろー」

神楽が閉じていた目を薄く開き、寝ぼけ眼で俺を捉える。
もう一度飯だぞと言えば、神楽は目を擦りながら押し入れから出てきた。

「おはよう神楽ちゃん。顔洗っておいで」
「うん」

艶々の米が入った茶碗と湯気の立つ味噌汁が入った碗を持った志織が居間に入ってきて、いつもの定位置にそれぞれの茶碗を置いていく。

「銀ちゃんのお味噌汁少し熱めにしたけど、熱すぎたら言ってね」
「おう」

自分の茶碗の前に座り、全員揃うのを待つ。
志織が全員分の茶碗を並べ終えたところで、丁度神楽も戻ってきていつもの席に座る。

「じゃあ食べよっか」

その志織の声を皮切りに、それぞれ頂きますと目の前のものに手をつける。
俺も目の前に置かれた味噌汁の碗を取り、火傷しないようゆっくりと啜ると、優しいほっとする味がそっと空っぽの胃袋を満たしていく。
その幸せに俺の口元が小さく綻んだ。


.

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ