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□甘い恋の始まりは
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最近、行き着けの店が出来た。
料理が美味いと言うのもあったが、行き着けになった理由はもっと別だ。
そこで働いてる女の子に会いに行くため。
まだ名前すら知らないけれど、今日こそは聞いてやろうと玄関にドカリと座ってブーツを履いていた。

「銀ちゃんまた出掛けるアルか?」
「もう銀さん少しは掃除手伝ってくださいよ」
「銀さんは大人だから色々あるんですー」

じゃ、行ってくらァと玄関を出て原チャリに跨がってその店へ向かった。
目的地に着き、窓の外から中を見る。
今日もやっぱりいた。

「いらっしゃいませ」

今日はついている。
店に入った俺を席に案内してくれたのは、お目当ての彼女だった。
今日も可愛い。
チョコレートパフェを注文し、お冷を一口飲んだ。
中に入った氷が、カランと音を立てる。
それから少しして、パフェが運ばれてきた。
やっぱり今日はついているようだ。
パフェを持ってきてくれたのも彼女だった。

「お待たせしました、チョコレートパフェでございます。いつもありがとうございます」

彼女はそう笑って言った。
いつも来ていることを知ってくれていた。
チャンスだと思った。
俺は思いきって彼女に声をかけた。

「あの、お名前は?」
「篠崎志織です。貴方は?」
「坂田銀時です」
「いつもありがとうございます、坂田さん」

ただ彼女の名を知り、彼女に名を呼ばれただけだというのに、嬉しさを抑えきれない。
しっかりと彼女の名を頭に刻み込んだ。

「また来てもいいですか?」
「是非。お待ちしてますね」

この恋は絶対にものにしたい。
俺はそれからもその店に何度も足を運んだ。
慎重に、けれど確実に距離を縮めていく。
そんな俺が彼女と恋人同士になるのは、それから約四ヶ月後の話──。


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