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□全てを抱いて眠ろう
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万事屋から徒歩十分ほどのマンションに住む俺の彼女が、今日は万事屋に泊まりに来ていた。
志織と付き合い始めてもう一年が経とうとしている。
新八も神楽もすっかり志織に懐き、本当の家族のように接している。
そして俺もまた、志織のことを心から愛し、本当の家族のように思っていた。
新八が帰った後、順番に風呂へ入った。
濡れた髪を乾かし終わった神楽はもう眠いと目を擦りながら寝床の押入に入って行った。
居間のソファにふたり並んで座る。
志織の髪から俺と同じシャンプーの匂いが、微かに俺の鼻を掠めた。

「オメー椿木使ったの?」
「うん、借りちゃった」

神楽ちゃんのシャンプー借りた方がよかった?と尋ねる志織の肩を抱き、寄せ柔らかい髪に鼻を押しつける。

「いや、俺の使えよ」
「うん。ありがとう」

志織の後頭部に手を回して、軽く触れるだけのキスをする。
少し動いただけでも志織から俺と同じ匂いが香ってきて、なんだか気持ちが高ぶる。
同じ匂いなのに、志織から香るというだけでより一層いい香りに感じるから尚更だ。
居間の電気を消して、和室に敷かれた布団に二人で入ったときも、その香りは俺の鼻を擽った。
俺の中に暖かな感情が広がる。
これも、愛しいという感情なんだろうか。

「おやすみ、銀ちゃん」
「おう、おやすみ」

今夜は、この愛しい香りを抱いて眠ろう。
俺はその腕に抱いた志織のこめかみに唇を落とすと、既に半分夢の中にいるであろう志織にもう一度おやすみと囁いて、目を閉じた。


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