銀(土銀←沖長編)

□KEEP AWAY FROM...
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俺はあの日、銀色の夜叉に恋をした。



「なあ中坊…。お前、あの土方の弟だろ?ちょっとツラ貸せよ。」

2年前の夏頃、俺は十数人の不良に囲まれ、リンチにあいそうになったことがある。銀魂高校の不良グループで、どうやら自分の兄に何か恨みがあるらしい事を言っていた。
さすがの俺でも、武器も何もない状態で総攻撃されたら、タダじゃ済まなかったはず。

「いいから、大人しく殴られろ!」

――――バキッ




不良が振り上げた拳は、俺には当たらなかった。それどころか、俺を殴ろうとした不良は路地の端まで吹っ飛んでいった。

「なんですかー?寄ってたかって弱い者イジメですかコノヤロー。そんなことしてるって知ったら、母ちゃん泣くぞー。」

俺の後ろから不良達に投げかけたであろうその声は、すごくやる気のないものだった。

「げっ、…やべーよ。あいつ、1年の坂田だ!白夜叉だ!」
「中3で夜兎高のあの鳳仙をのしたらしいぜ…。」
「ま、まじかよ…、どーする…?」

不良達は俺の後ろの奴に怖気付いていた。有名らしい坂田は、俺の前に出ると、俺より広いその背で俺を守る様に立った。

「あ、あの…。」
「てめーら!!相手は一人だ!全員でかかれ!!」

俺の声に被せるように、さっき吹き飛ばされた不良が叫ぶ。不良達はその声に、勝機を見出したのか、次々と獲物を構えた。中にはナイフを持った者もいる。

「あ、あんた、大丈夫ですかィ…?」

急に不安になった俺は、小さく坂田に話しかけた。だって、普通勝ち目があると思いやすか?手ぶらの人間に、獲物を持った奴らが大勢。多勢に無勢でィ…。
でも、坂田の目に、恐怖なんてなかった。ただ、赤い目をギラギラさせて不良達を見据えていた。

「いいから、じっとしてろ。」

ニヤッと口角を上げた彼に、惚れるなと言う方が無理だ。


不良達は一斉に坂田に向かって突っ込んできた。終わりだと目を閉じた俺の耳には、予想外の悲鳴が聞こえてくる。

「ぎゃああああっ!!」
「うぁあああ!!」
「ひっ!?」

そっと目を開けば、目の前は地獄絵図。金棒を振り回す夜叉がいた。
10分とかからず、数分でカタはついた。立っているのは坂田のみ。

「あ、あの…ありがとうごぜーやす…。」

坂田は「おー。」と一言、片手をあげて応えた。




それが、俺の初恋である。

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