MaiN

□四日目:昼間
2ページ/2ページ


日が傾き、辺りが暖かな黄金色に染まる頃、二人を乗せた馬車は人で溢れる皇都の広場に到着した。

御者に礼を言い、賃金と少しの心付けを渡したルルは大きく深呼吸をした。

「変わらねぇな」

少し霞んだ空に掛かるのは灯火に瓦斯燈に電灯に、誰かの能力で作った擬似灯籠。行き交う人々は人間に亞人、翼種属に魚人に有角類。さざめく言葉には大陸共通語や華國語、龍語に無舌声と、数え上げればきりがない。

「ルルちゃん、行くぞ」

ウィルの言葉に感傷から呼び戻されたルルは、小さく頷いてその後を追おうとした。だが、春活祭準備で沸き立つ広場の雑踏は、容赦なく小柄なルルを押し流す。

「ちょ、ウィル?」

ルルの呼び掛けも、混雑する広場の中では無力だった。ウィルは早くこの人混みから抜け出したいらしく、後ろを振り返りもしない。

あっという間にウィルの背中はルルの視界から消えた。

「……嘘だろ?」

途方に暮れるルルの呟きは、誰にも聞かれる事なく坩堝に融けた。
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ