MaiN
□四日目:昼間
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「懐かしいな」
馬車に揺られながらルルは小さく呟いた。
退屈そうに窓の外に煙草の煙を吐き出していたウィルが、その呟きを耳ざとく聞きつけた。
「そういやルルちゃんは皇立學書院出身だっけか」
「あぁ。中退だけどな」
「それでも入れるだけエリートじゃん」
「俺の頭の出来を舐めるなよ。ほとんど実技で入ったようなモンだからな」
「はは、納得だ」
「少しは否定しろよ」
日は既に中天にあり、春の陽光が花咲く路傍を輝かせていた。日射しに眩しそうに目を細めたルルは、長閑な光景に微笑んだ。
「……そういや、ゼットさんって何者なんだ?」
「んー……なんつーか、スゴい人?いや人じゃねぇか」
「全然わかんねぇよ」
「会えばわかるさ」
そう言うとウィルは新しく煙草に火をつけて、ルルに要るかと目で訊いてきた。ルルが首を横に振ると、ウィルは不満げにその煙草を咥えて窓の景色を眺め始めた。
子供のように拗ねる中年の姿に苦笑したルルは、これからすべき仕事の確認に入った。