小説(神喰い)
□コウタがソーマの誕生日を祝う話
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*コウタside*
プレゼントの小さな箱を抱えながら、俺達の部屋がある区画の廊下を進む。
まぁ、多分こんなもの持ってったところで、アイツはそんなもんいらない、とか言うんだろうけど。
目的の部屋の前に着く。
ちょっと深呼吸して、髪型とか気にしちゃったりして、これあげたらなんて言おうとか、台詞を気にしちゃったりして。
うん、準備おっけー。さぁ、部屋にはいろう。
トントンとノックをする。
「……コウタか」
「じゃっじゃーん! Happy birth day、ソーマ!」
扉を開けてくれたソーマは、いつもの仏頂面よりどことなく優しい表情をしていた。
「じゃあ、ソーマの21歳の誕生日を祝して……カンパーイ!」
「……乾杯」
何かある度にいつも乾杯をしているせいか、またか、って顔をされた。
まぁまぁ、日本人は昔からこういうことしていたらしいし、ここは極東なんだから、その方式には従ってもらうとしよう。
プレゼントを渡すと、ソーマは少し小さめの声でありがとう、と言ってきた。
ちなみに、プレゼントの中身は十字架を象ったピアスだ。
前にピアスの種類があまり無いと言っていたのを思い出したから買ってみた。
「さて、これもいつしか恒例行事となってきたわけだけれど……」
「お前が勝手にしただけだろう」
「いつもみたいに話すだけじゃつまんないからさ、ちょっとしたゲームを持ってきました!!」
「聞けよ話」
なんかソーマが喋ってた気がする。
まぁいいか、多分なんか……皮肉だろ。
そんなことは置いといて、俺はゲームの準備をする。
ソーマも楽しめるもので、二人でできるものといったら最早これしかない。
俺は、ヒバリちゃんに土下座までする勢いで頼んだ物資を取り出した。
「じゃん! これ、なんだと思う?」
「……POCKY?」
「そう、ポッキー! 良くわかったな!」
多分パッケージの名前そのまま読んだだけなんだろうな。
ソーマがポッキーのこと知ってるとは思いにくいし。
「今日はこれを使ったゲームをしようと思いまっす!」
「どうせまたろくでもないこと考えてんだろう?」
「……。ルール説明するよ!」
「おい、なんだその間は」
「まぁ実践すればすぐわかるでしょ! じゃあソーマはこっちから食べていってね、俺はこっちから食うから」
ソーマがポッキーを咥えた俺を冷たい目で見てくる。
すげぇ怖い。背筋が凍りそうだ。
「ごめんなさい悪ふざけが過ぎました許してくださいソーマさん」
とりあえず土下座した。
その後はずっと、ポッキーを食べながらいつもと変わらない他愛のない会話しかしなかった。
別にそれ以上を求めているわけではないんだけどさ……誕生日くらい、特別にしてあげたくて。
幸せな気分にしてあげたくて。
だから、俺はちょっと特別な任務を受注しておいた。
「んじゃソーマ、時間になったことだし、任務行くか」
「は?」
聞かされてない、という顔をしてる。
そりゃそうだ、言ってないし。
とりあえず急いで準備しておけよ、とだけ伝えて、俺は任務の準備をしに部屋を出たのだった。