小説(DW:A)
□あくむ
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どろどろと、流れる血。
俺の胸から、流れていく。
どんどん体が軽くなっていって、最後には、何も残らない。
だけど、次に目を覚ました時には、俺の体は元通りになっていて、目の前に兄さんが立っている。
そして、体から血を流し、さっきまでの俺と同じ状態で一言、こう言うんだ。
「アキラ、お前を死なせたりはしないよ」
「うわあああああああっ!」
絶叫しながら飛び起きる。目の前が真っ暗で、まだ夢から覚めていないような感覚がした。
寝ていただけなのに、あの夢のせいで大量の汗をかいていた。
だけど、暑いわけじゃない。恐怖で、焦りで、冷や汗があふれ出ていく。
「アキラっ!? 大丈夫!?」
隣のベッドで眠っていた兄さんが、いつの間にか俺の目の前にいた。
表情は俺を心配してくれているのか険しくなっていたけれど、目の前の兄さんはいつもの兄さんだった。
それが今はひたすら嬉しくて、安心できて、俺は思わず兄さんに抱きついた。
「にいさっ、兄さんっ……!!」
涙が出てきて、とめたくてもとまらなくて、ただただ泣きじゃくる俺を兄さんはずっと抱きしめててくれていた。
「よしよし。大丈夫、大丈夫」
背中をポンポンと叩かれて、少しホッとする。
自分が子供みたいで、少しだけ悔しかったけれど、今は兄さんの温かさがほしかった。
「……ありがとう、兄さん。もう大丈夫」
やっと涙も止まって、普通に喋れるようになった。
「良かった。悪い夢でも見たのかい?」
優しく問いかけられて、俺はまたホッとする。
兄さんの優しい声が、振る舞いが、好きだから。
俺が見た夢の内容を、少しずつ話す。兄さんは微笑みながら、最後まで聞いてくれた。
「よく話してくれたね、アキラ。大丈夫だよ、確かに僕はアキラを守るけど、僕自身もちゃんと守れるように頑張るから」
「うん……そうだよね。ありがとう兄さん、でも俺だってもう子供じゃないんだからね!」
「ふふ、はいはい。じゃあもう寝ようか?」
「うん。おやすみ、兄さん」
温かい、ふわふわした気持ちでベッドにもぐる。今日はもう、あの夢は見なくて済みそうだ。
「おやすみ、アキラ」
優しい兄さんの声。温かい手のひらに頭をなでられながら、俺は眠りについた。
「今度こそ、絶対に守るからね、アキラ」