銀魂 攘夷

□誰が正義やら
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どのくらい経ったのか。暫くの静寂を割いたのは、間抜けな声たちだった。



「おーい、おまんら何しとるがか」

「貴様ら帰ってたんじゃないのか」



やってきたのはヅラと辰馬だった。そっちこそ何故ここに。状況を説明すんのも聞くのも面倒だ。

すると高杉がかくかくしかじかを話しはじめた。ヅラと辰馬は黙ってそれを聞いている。



「...そうか、かくかくしかじかじゃったか」

「そうだな、それはかくかくしかじかだったな」

「え、高杉マジでかくかくしかじかって言ってたの」

「あ?何のことだ」

「ふふ、そうなの、かくかくしかじかだったの」

「「笑ってる場合じゃねーだろ」」



ああ、また。高杉と息ぴったりにツッコミを入れてしまった。
ゆきがあまりにも呑気なばかりに。



「アハハ、そうじゃの。落ち込んでてもしょうがないきに、下賤らのこともある、暫く此処でのほほんとするか。ワシらと居れば何も怖いことたあない」



辰馬もへらへらと笑い始める。そして自分たちが海辺まで来た理由を話し始めた。誰も聞いてねえってのに。



「ここへは水切りしに来てのー。そこらに落ちとる石はよう跳ねる。ヅラの奴がやっぱり女は未亡人だと言い張るし、ワシは多少気が強いくらいの娘の方がタイプじゃきーなかなか話がつかんでの」

「で、なんで水切りするわけ」

「たくさんハネた方が勝ち、というわけだ。というかヅラじゃない桂だ」

「はあ?」



で、勝ったらどうなるわけ。もうどうでもいいや、こいつらの話は聞いてらんねえ。それよりゆきをどうするかが先決だ。



「なあ、ゆきちゃんよ」

「「いざ、尋常に勝負!!」」



俺の声を遮り、馬鹿2人が一斉に浜に向かって走る。石を瞬時選りすぐり、投げると思いきやくるりとこちらを向く。



「おーい、銀時、高杉。ああ、そこの娘もやろう」

「名案じゃなヅラ。娘っ子〜、水切りやったことあるがか?おまん、名は?」

「ゆきです」

「そうか、ゆきか。ちっこくて可愛いのー。高杉とお似合いじゃ」

「辰馬どういう意味だ。...ゆき、やるか?」

「ん、ちっこくても水切りは得意ですよ」



高杉とゆきは腕まくりをしながらウキウキと歩みを進める。



「ようし、負けた奴のおやつ奢りだ。不戦敗ありといったところにするぞ〜いっいのっかな〜」



ヅラが俺の方をジロジロ見ながらそう言ってくる。10数えるぞ〜なんて言うもんだから、ますます行きたくなくなった。

するとゆきがくるりと振り向いて、
控えめに言った。



「銀時さん...も、やりましょ」

「アンタが負けたら、ぜんざいでも作れよな」



しぶしぶと岩を降りる。
石を選んだ皆が海辺に並んだ。そして、ヅラが叫ぶ。


「水切りおやつ争奪戦んんん」

「じゃねーだろ!未亡人と気丈な女はどこいったんだ!」



俺のツッコミは虚しく、結局5つの石が海を跳ねていった。
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