銀魂
□いつもと同じがいい
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「今回もあんぱん全種類持ってっちゃお〜」
「お腹いっぱいで寝ちゃわないでくださいね」
「大丈夫、俺そんなヘマしないよ」
そんな会話をしたのが昨日の夕方。
たった半日前までは、元気だったのに。
朝、門をくぐると、朝礼同様整然と並んだ隊士たちがいた。
その中聞こえてきたのは、土方さんの声。
“山崎がやられた”
本人からの連絡からするとまだ重症ではない、救助を最優先にとの命が出る。
張り詰めた空気のなか、次々とパトカーが出動していった。
私は心ここに在らずで仕事を進めた。残った隊士たちの朝食や掃除洗濯をしたのだけど、あまり記憶がない。
時折、きっと大丈夫だよと声をかけてもらったけれど、朝の土方さんの言葉が耳に張り付いていて気休めにもならなかった。
午後の洗濯をしている頃、人が帰ってくる気配があった。
蓮ちゃんと慌てて玄関に駆けつけ、皆におかえりと声をかける。戻ってきた人たちには怪我は無く、大きな服の汚れもない。表情も悪くない。鎮圧はそう大ごとではなかったのだろう。
「山崎さん、いないね、」
そう蓮ちゃんが呟く。私は頷くだけだった。
蓮ちゃんが通りがかった土方さんに声をかける。
「土方さんおかえりなさい。...山崎さんは」
「れ、蓮ちゃん」
状況を聞くのが怖くて、彼女を静止してしまった。土方さんは少し黙った後、質問に答えた。
「...山崎なら生きてる。意識もある。大江戸病院に搬送された。見舞いなら、明日以降にしとけ」
「よかった」
搬送されるほどの大怪我を負ったのか。はたまた面会謝絶でないことに安堵して良いのだろうか。
「ゆきちゃん、明日お休みとってお見舞い行っておいでよ。ご飯は頑張るからさ」
「ありがと。でも大丈夫だよ、面会開始の3時にはあがれるし」
「明日は土曜だから朝から行けるよ、今日だって仕事が手についてなかったじゃない」
朝ご飯の味噌汁、お出汁入れ忘れてたよ。私じゃないんだし、と蓮ちゃんは眉を下げた。
全然気がつかなかった。
自分の仕事もろくにできず、怪我をした隊士には心配しかできないことに落胆してしまった。
「大丈夫だよ、きっと。みんなの表情も見たでしょ、ね!」
励ましを受けて、彼女の提案を受けることにした。